コモンウェルス首長

コモンウェルス首長とは

コモンウェルス首長（Head of the Commonwealth）は、イギリス連邦（コモンウェルス）の象徴的なトップの地位です。1949年の創設以来、イギリスの君主がこの役職を務めてきました。

歴史的背景

かつて「七つの海を支配する」と言われたイギリスは、広大な植民地帝国を築いていました。しかし、1840年のカナダの自治領化を皮切りに、オーストラリア（1901年）、ニュージーランド（1907年）、南アフリカ（1910年）、アイルランド（1921年）と、次々に自治を獲得していきました。

1926年のバルフォア報告書では、これらの自治領は「王冠に対する共通の忠誠によって結ばれ、イギリス連邦の一員として自由に連合した、平等で従属しない存在」と定義されました。この方針は、1931年のウェストミンスター憲章によって正式なものとなり、各自治領で採択されました。

1947年にはインドが自治領（インド連邦）として承認され、翌年にはセイロン（スリランカ）が続きました。インド制憲議会は共和制を選択しましたが、イギリス連邦への残留を希望したため、イギリス連邦の枠組みは大きく見直されることになりました。

1949年のコモンウェルス首相会議で、イギリスの君主は「独立構成国の自由な連合の象徴」としてコモンウェルス首長に位置付けられました。これにより、加盟国はイギリスの君主への忠誠義務から解放され、連邦からの脱退の自由を得て、主体性を確保できるようになりました。

役割

コモンウェルス首長には正式な任務は存在しませんが、イギリス連邦の統合の象徴として重要な役割を担っています。1952年から2022年まで70年間コモンウェルス首長を務めたエリザベス2世は、各国の首脳と会談し、国民と交流を深めてきました。

また、イギリス連邦に加盟するためには、コモンウェルスの慣習と規範を受け入れる必要があり、その中には現職のコモンウェルス首長を首長として承認することが含まれています。

任命

コモンウェルス首長は世襲制ではありません。これまでイギリスの君主がその任に就いてきましたが、これは自動的に決まるものではありません。2018年4月20日には、当時の皇太子チャールズ3世が、イギリス連邦首脳会議でエリザベス2世の後継として指名されました。この際には、イギリスのメイ首相とカナダのトルドー首相が事前にチャールズ皇太子の就任を支持する声明を発表しています。

メイ首相は、チャールズ皇太子が40年以上にわたりイギリス連邦を支えてきたことを理由に、「首長としてふさわしい」と述べました。また、エリザベス2世自身も、チャールズ皇太子がいつの日かこの地位を継承することを「切なる願い」としていました。

一方で、加盟国の中にはこの地位を加盟国間で持ち回り制にすべきという意見も存在します。

まとめ

コモンウェルス首長は、イギリス連邦の象徴として、その歴史、役割、そして任命プロセスは、連邦の進化と変化を反映しています。過去の植民地支配から、平等な主権国家の連合へと変貌を遂げたイギリス連邦において、その存在は今後も重要な意味を持ち続けるでしょう。

参考資料

* 松田幹夫「アイルランドのコモンウェルス脱退 : リーディング・ケースを中心に」『獨協法学 = Dokkyo law review』第56巻、獨協大学法学会、2001年、ISSN 03899942、NAID 120006029556。

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