コモン・モード

コモンモードとノーマルモード：差動信号における雑音の挙動

電子回路において、差動入力はノイズ耐性を高める重要な技術です。差動入力とは、信号を二本の線で伝送し、その差分を検出することで信号を取り出す方式です。この際、二本の信号線に同じ位相で現れるノイズをコモンモードノイズ、逆位相で現れるノイズをノーマルモードノイズと呼びます。

コモンモードとは、差動入力端子の正極と負極の両方に、同位相で同じ大きさの信号が現れる状態を指します。これは、外部から印加されるノイズが両信号線に均等に影響する際に発生します。理想的な差動増幅器では、コモンモード信号は完全に打ち消され、出力には現れません。この打ち消し能力は、コモンモード拒否比(CMRR)で表されます。CMRRが高いほど、コモンモードノイズの影響を受けにくくなります。

ノーマルモードとは、差動入力端子の正極と負極に逆位相の信号が現れる状態です。これは、信号そのもの、あるいは、信号線に非対称的に影響するノイズによって発生します。ノーマルモード信号は差動増幅器によって増幅され、出力に現れます。

コモンモードとノーマルモードの具体的な例

例えば、二本の信号線に同じ大きさのノイズが同位相で重畳している場合、これはコモンモードノイズです。差動増幅器は、このノイズ成分を効果的に除去します。一方、ノイズが逆位相で重畳している場合、これはノーマルモードノイズであり、差動増幅器ではノイズ成分が増幅されてしまいます。

コモンモード雑音の低減技術

コモンモード雑音は、適切な回路設計と配線によって低減できます。具体的な方法として、以下のものが挙げられます。

平衡接続: 業務用マイクロホンなどで用いられる平衡接続は、信号線を2本用いて、両信号線に同程度のインピーダンスを持たせることで、外部ノイズが両信号線に同等に影響し、コモンモードノイズとして現れるようにします。これにより、差動増幅器でノイズを除去しやすくなります。
ツイストペアケーブル: ツイストペアケーブルは、信号線を互いにねじり合わせることで、両信号線の間に生じる磁界を打ち消し合い、ノイズの誘起を抑制します。また、ケーブルのインピーダンスを整合させることで、コモンモードノイズの発生を抑制します。10BASE-Tなどの高速伝送では、この方法が用いられています。
* フィルタ回路: コモンモードチョークコイルなど、コモンモードノイズを特異的に除去するフィルタ回路を用いることで、ノイズの影響を低減できます。

まとめ

コモンモードとノーマルモードは、差動信号におけるノイズの挙動を理解する上で重要な概念です。コモンモードノイズは、適切な回路設計と配線によって効果的に低減できる一方、ノーマルモードノイズは信号自身に起因する部分もあるため、除去が困難な場合があります。そのため、設計段階でコモンモードノイズの抑制を考慮した設計を行うことが重要です。平衡接続やツイストペアケーブル、フィルタ回路などの技術を活用することで、ノイズに強い、高信頼性のシステムを構築できます。

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