平衡接続

平衡接続：ノイズに強い伝送技術

平衡接続とは、2本の導線を使い、一方に元の信号を、もう一方にその信号を反転させたものを流す伝送方式です。受信側で両信号の差をとることで、両導線に共通して発生するノイズ（コモンモードノイズ）を除去し、ノイズに強い伝送を実現します。差動信号とも呼ばれ、様々な機器やシステムで利用されています。

電話回線における平衡接続

電話回線では、加入者宅と交換機間を2本の線で接続し、平衡接続が用いられています。一方の線に正方向の音声信号が送られると、もう一方の線には逆方向の信号が流れます。この方式により、長距離伝送でも安定した通話を可能にしています。電話回線のインピーダンスは通常600Ω程度に保たれており、長距離伝送における信号減衰を抑制する役割も担っています。

音響機器における平衡接続

マイクやミキサー、アンプなどの音響機器では、HOT（信号線）、COLD（反転信号線）、GROUND（接地線）の3線で平衡接続が行われます。GROUNDは基準電位として機能し、ノイズの低減に貢献します。多くの場合、ケーブルの外装シールドが接地線を兼ねています。平衡接続は、特にマイクのようにノイズの少ない機器において、配線からのノイズの影響を大きく軽減する効果を発揮します。ただし、楽器自体からノイズの多いギターなどでは、平衡接続の効果は限定的かもしれません。XLRコネクタは音響機器における平衡接続で広く使われています。

テレビ、FMラジオ、無線機における平衡接続

アナログ放送時代には、アンテナとチューナー間を接続するフィーダー線（300Ωや200Ω）による平衡接続が一般的でした。しかし、同軸ケーブルの普及や機器側の入力端子の変更に伴い、現在ではほとんど見られなくなりました。

テレビ、FMラジオ、無線機では、平衡接続は必ずしもノイズに強いとは限りません。これは、これらの機器が使用する高周波数帯では、波長が短いため、アンテナやバランの製作精度による平衡度の低下、線間距離の影響、受信信号レベルの低さといった要因が影響するからです。また、フィーダー線はシールドされていないため、外来ノイズの影響を受けやすいという欠点もあります。

デジタル放送の普及に伴い、HDMI規格など差動信号を用いた接続方式が主流となっています。フィーダー線を使用する必要がある場合、整合器などを用いて75Ωの同軸ケーブルに変換する必要があります。

高周波ICにおける平衡接続

高周波ICでは、接地インピーダンスが十分に低くならない場合があり、平衡接続を用いることで、接地電位に依存しない安定した信号伝送を実現できます。TMDS、LVDS、eDP、iDPなど、多くの高周波IC規格で平衡接続が採用されています。

コンピュータにおける平衡接続

コンピュータにおいても、平衡接続は高速で信頼性の高いデータ伝送に役立ちます。2値信号の場合、電流の方向を検出することで信号を伝送します。これは、ノイズの電圧は高くても電流は小さいという特徴を利用したもので、ノイズ耐性を高める効果があります。HyperTransport、IEEE 1394、FireWire、SATA、PCI Express、USBなど、多くのコンピュータインターフェース規格で平衡接続が採用されています。

まとめ

平衡接続は、ノイズの影響を受けにくい伝送方式として、電話、音響機器、コンピュータなど、様々な分野で広く利用されています。しかし、その効果は周波数や信号レベル、使用するケーブルの種類など、様々な要因に影響を受けるため、用途に応じて適切な設計と実装を行うことが重要です。

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