コラード&コラード

コラード&コラードの歴史

コラード&コラード（Collard & Collard）は、かつてロンドンに存在した著名なピアノ製造業者です。この会社は、フレデリック・ウィリアム・コラードとウィリアム・フレデリック・コラードという二人の兄弟によって設立されました。彼らの足跡をたどることは、18世紀後半から19世紀にかけてのロンドンのピアノ製造業の発展史を紐解くことにもつながります。

Longman & Broderipとの関わり

コラード兄弟の物語は、1767年に設立された音楽販売および製造業者であるLongman & Broderipから始まります。Longman & Broderipは、当初、Geib and Guilfordといったピアノメーカーの楽器を販売していました。現存する最古の楽器は1770年製のスクエア・ピアノであり、ボストンの博物館に展示されています。この会社は、共同経営者の変更を経て、Longman & Lukey、Longman, Lukey & Comp.と社名を変更しました。

1778年には作曲家でピアノ教師のムツィオ・クレメンティが共同経営者として加わり、会社はLongman & Clementiとなりました。この時期、フレデリック・コラードがクレメンティの共同経営者として参画しました。フレデリックは楽器製作者、特に響板の専門家として高い評価を得ていました。クレメンティが販売を担当する一方で、フレデリックはピアノ製造に責任を持つようになりました。しかし、クレメンティは保守的な考えを持ち、ピアノ製造における革新に反対していたようです。

コラード兄弟の登場

フレデリック・ウィリアム・コラードは、1772年に洗礼を受け、14歳でロンドンに移り、Longman, Lukey & Broderipに雇われました。弟のウィリアム・フレデリック・コラードは、1776年に洗礼を受け、ピアノ製造技師および発明家としての才能を発揮しました。彼は詩や文学にも情熱を注いでいました。1799年、Longman & Co.は経営難に陥り、新たな経営体制が敷かれ、その中にはフレデリック・W・コラードも含まれていました。1800年にはLongmanとHydeが引退し、会社はMuzio Clementi & Co.となりました。

その後、ウィリアム・F・コラードが共同経営者として加わり、1831年までコラード兄弟とクレメンティの共同経営が続きました。1842年にウィリアム・F・コラードが引退した後、フレデリック・W・コラードが単独経営者となり、甥のフレデリック・ウィリアム・コラードJr.とチャールズ・ルーキー・コラードが共同経営に加わりました。

コラード&コラードの誕生

1832年以降、長年クレメンティの名前で販売されていたピアノのブランドが「コラード&コラード」と改められました。このブランド名のもと、多くの特許が取得され、演奏機構やフレームシステムの改良が施されました。会社は音楽出版事業を中止し、ピアノ製造に注力しました。ただし、例外として1858年までイギリス東インド会社向けにラッパ、横笛、太鼓の製造も行っていました。1851年のロンドン万国博覧会にはグランドピアノを出品し、その技術力を世界に示しました。

工場の火災とコラード兄弟の死

コラード社は過去に二度の大火に見舞われています。1807年にはトテナム・コート・ロードの工場が全焼し、1851年にはカムデン・タウンの工場が全壊しました。ウィリアム・フレデリック・コラードは1842年に引退し、1866年に亡くなりました。兄のフレデリック・ウィリアム・コラードは1860年に亡くなるまで、1786年から同じ住所に居住し続けました。

その後の歴史

1900年以降、ドイツのピアノメーカーの台頭により、コラード&コラードはイングランドにおけるピアノ製造の衰退に巻き込まれました。1929年にはチャペル&Co.に買収され、1963年の火災でコラードとクレメンティの記録が失われました。1980年にはチャペルのピアノ製造および小売事業がケンブル&カンパニーに売却されました。

コラード&コラードは、その革新的な技術と優れた職人技で、ピアノ製造史に名を刻みました。彼らのピアノは、今もなお、歴史的遺産として大切にされています。

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