コリメーター
コリメーターとは
コリメーター（collimator）は、光や粒子を平行にするための装置です。日本語では視準器とも呼ばれます。この装置は、光学、原子力、軍事など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。
光学用途
光学分野では、コリメーターは主に光学機器の製造や調整に使用されます。完全な平行光線、つまり無限遠にある点光源からの光線群を作り出すことで、レンズやミラーを正確に配置し、焦点距離を調整するのに役立ちます。具体的には、望遠鏡やカメラのレンズにおいて、焦点距離が仕様通りになるように、また、あらゆる距離の対象物にピントが合うように調整します。
コリメーターによる調整が不十分な場合、ピントが合わないだけでなく、望遠鏡の接眼レンズやカメラのレンズの交換が困難になることもあります。従来のコリメーターは、平行光線を生成する光学系と、対物側に置かれた光源のパターンを目視で確認しながら調整するものが一般的でした。しかし、近年ではレーザー光線を使用したコリメーターも広く利用されています。
原子力用途
原子力分野では、コリメーターは原子核や分子線の実験、測定において、ビームを絞り、粒子の経路を平行にするために使用されます。例えば、蛍光X線分析装置などで、特定の方向からの粒子のみを検出するために活用されています。
軍事用途
軍事分野では、コリメーターは平行光線が得られる性質を利用して、銃や砲の照準器として使われます。特に、ダットサイトなどの照準器として利用されることが多いです。
小銃の照準
小銃の照準において、従来の照準器は照星（フロントサイト）、照門（リアサイト）、目標の三点を見通す必要がありましたが、コリメーターを使用すると、コリメーター内のレティクルを目標に合わせるだけで照準が完了します。さらに、覗く位置が多少ずれても正確な照準が可能なため、射撃の精度向上に貢献します。
火砲の照準
火砲の照準では、コリメーターは間接射撃において重要な役割を果たします。火砲の設置時に方向盤を用いて正確な方位角を測定した後、コリメーターを設置し、射撃時の照準点として利用します。従来は、標桿と呼ばれる棒を遠近に立てて照準していましたが、コリメーターの導入により、準備時間の短縮と照準精度の向上が図られました。
コリメーターを用いた射撃の例
例として、火砲の砲身が方位角「0ミル」を向いている状態で、砲に搭載されたパノラマ眼鏡を右真横の「1600ミル」に向けます。コリメーターを設置し、パノラマ眼鏡のレティクル中央線とコリメーターの中央線が合うように調整します。射撃時に砲身を左右に動かした場合でも、パノラマ眼鏡を「1600ミル」に向けた状態で、コリメーターの中央線を再照準することで砲身を「0ミル」に戻すことができます。
また、砲身を「0ミル」から「50ミル」に向けて射撃したい場合は、パノラマ眼鏡を「1550ミル」に向け、コリメーターのレティクル中央線に合わせることで、砲身を正確に「50ミル」の方向へ向けることができます。
射撃の反動でコリメーターが視認できなくなっても、コリメーターのレティクルに振られた数字とパノラマ眼鏡のレティクルの数字を合わせることで、正確な射撃が可能です。ただし、コリメーターの鏡胴内部が完全に見えなくなった場合は、再度照準設定が必要になります。また、コリメーター内の数字の左右を誤ると、全く別の方向を向いてしまう危険性があります。
コリメーター設置時の注意
コリメーターの設置位置は火砲の特性によって異なり、特に決まった設置位置はありません。1km先の目標を射撃する際に方位角を1ミル誤ると、着弾が1mずれるため、コリメーターの正確な設置と使用が重要です。
まとめ
コリメーターは、光や粒子を平行にするための重要な装置であり、その応用範囲は光学、原子力、軍事など多岐にわたります。それぞれの分野において、精度の高い測定や調整、照準に不可欠なツールとして活用されています。
参考資料
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。