コルト・パイソン

コルト・パイソン：リボルバーのロールス・ロイス

コルト・パイソンは、アメリカのコルト社が1955年に発表した回転式拳銃です。その名は、英語でニシキヘビを意味する「パイソン」に由来し、コブラやキングコブラなど、同社が蛇の名を冠した拳銃シリーズの一つに位置づけられます。

開発の歴史

コルト・パイソンの開発は、コルト社のトップセールスマン、ビル・ヘンリーの提案がきっかけでした。彼は、NRAブルズアイ競技で見たカスタムメイドのリボルバーに感銘を受け、最高級のターゲットリボルバーの開発を主張しました。この提案を受け、コルト社は熟練のガンスミス、アルベルト・ギュンターを責任者として開発に着手。第二次世界大戦中に開発されたコルト.357をベースに、1953年の試作を経て、1955年に.357マグナム弾を発射可能な高級リボルバーとしてコルト・パイソンが誕生しました。

当初は6インチの銃身を持つモデルが発売され、その後2.5インチ、4インチ、そして8インチの「パイソンハンター」モデルも登場しました。さらに、3インチモデルの「コンバットパイソン」も存在します。

コルト・パイソンは、多くの部分が手作業で調整されていたため、生産効率は低く、高価格帯のリボルバーとなりました。1970年代には、同社の他のモデルの約2倍の価格で販売されていたと言われています。その高い価格と精巧な作りから「リボルバーのロールス・ロイス」という異名も持ちました。

高価格帯ながらも人気を博したコルト・パイソンですが、1999年には販売減少と製造費の高騰を理由に生産が停止されました。しかし、その後も限定生産やリニューアルを経て、2020年にはステンレス鋼製のモデルが再販されるなど、現在もその名を残しています。

特徴

コルト・パイソンの特徴は、その高い精度と美しい仕上げにあります。Iフレームサイズのフレームに.357マグナム弾（.38スペシャル弾も使用可能）を使用し、反動を抑えるための重量級のエジェクターロッドハウジング、交換可能なランプタイプの照星、上下微調整可能な照門など、射撃精度を追求した設計がなされています。熟練工による1丁1丁の手作業での調整も、その品質の高さを支えていました。

銃身上部のベンチレーテッドリブ（放熱板）は、銃身の発熱を抑える効果があると考えられていますが、実際には効果は限定的であるという見解もあります。スコープ装着モデルでは、このベンチレーテッドリブがマウントとして利用されています。

トリガーはシングルアクションでの射撃に適しており、ハンマーはワイドチェッカードタイプ、グリップは美しい曲線を描く木製グリップが特徴です。初期モデルは、フロントサイトにレッドインサート、リアサイトにAccroタイプを使用し、グリップはフルチェッカードグリップとなっていました。

表面仕上げは、初期モデルでは「コルトロイヤルブルーフィニッシュ」と呼ばれる黒錆処理が施されており、深みのある黒色を呈していました。しかし、熟練工の引退などにより、後期のモデルでは仕上げの質が低下したと言われています。そのため、初期のモデルや状態の良い個体はコレクターの間で高値で取引されています。また、フレーム素材には通常はスチールが使用されますが、ステンレス製のモデルも存在します。

コルト・パイソンは、S&W社のリボルバーと比べてトリガーの機構が複雑で扱いにくいことから、S&W M19やM586のフレームにパイソンの銃身を組み合わせたカスタムモデルも存在します。代表的なものとして、ケン・カゲヒロが製作した「スマイソン」、ビル・デイヴィスが製作した「スモルト」などが挙げられます。また、コルト社公認のカスタムモデルとして、「コルト・グリズリー」も存在します。

バリエーション

コルト・パイソンには、いくつかのバリエーションが存在します。

コルト・パイソンハンター: 8インチ銃身モデルで、ラバーグリップとLEOPOLD製ピストルスコープを標準装備していました。限定販売され、警察庁長官狙撃事件で使用されたことでも知られています。
コルト・コンバットパイソン: 3インチ銃身モデルで、競合他社の3インチリボルバーに対抗して開発されました。「パイソン・カリフォルニア・コンバット」という、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール向けに製作されたモデルも存在すると言われています。
コルト・ダイアモンドバック: パイソンの廉価版として開発されました。小型で、.38スペシャル弾専用となっており、.357マグナム弾は使用できません。

コルト・パイソンとS&W M19/M586

コルト・パイソンは、S&W社のM19やM586などのリボルバーと比較すると高価でした。そのため、公的機関での採用例は少なかったと言われています。S&W M19は、初期モデルでは.357マグナム弾使用時の耐久性に問題がありましたが、熱処理技術の向上によりこの問題は解決されました。また、コルト社の品質低下も、ユーザーが他社製品に流れる一因となりました。

コルト社がダブルアクション・リボルバー生産から撤退した後も、コルト・パイソンエリートとして受注生産が続けられましたが、2005年の50周年記念モデルの生産終了後、2020年に再販が開始されました。

登場作品

(このセクションには、具体的な作品名は記載されていませんでした。)

参考文献

Maoka, Satoshi; Masami, Tokoi. “Five decades of PYTHON”. 2005年8月15日. 2012年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月2日閲覧。

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