コルネリアス・ルッツ

コルネリアス・ルッツは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、銀河帝国の主要人物の一人です。作中では主に「ルッツ」と呼ばれています。

概要

ルッツは、ローエングラム陣営の主要な提督の一人であり、卓越した射撃の腕前を持つことで知られています。彼の乗艦は、OVA版ではスキールニル、Die Neue These版ではヘルズブレイズです。

本編での初登場は、ラインハルトが元帥府を開設した際で、早い段階からラインハルトを支える古参の提督として登場します。原作外伝には登場しませんが、OVA外伝『決闘者』では、時系列上の初登場として、火薬式銃の扱いに不慣れなラインハルトにアドバイスを与える場面が描かれています。

略歴

ルッツは少佐時代、『決闘者』でラインハルトに射撃のアドバイスをしたのがシリーズにおける最初の登場です。ラインハルトが元帥府を開設してからは、古参の提督として常にラインハルトを支えました。道原かつみの漫画版では、元帥府に登用された最初期の中将として名前が挙げられています。

同盟軍の帝国領侵攻作戦では、ボルンソン星系においてボロディン中将率いる第十二艦隊を急襲し、旗艦を含むわずか8隻にまで戦力を削りました。アムリッツァ会戦では、キルヒアイス率いる別働隊の一員として、ワーレンと共に同盟艦隊の背後を突く活躍を見せます。リップシュタット戦役でも、キルヒアイスの指揮下でワーレンと共に辺境の制圧に貢献しました。

ラインハルトが帝国の支配権を確立すると、ルッツは大将に昇進します。ラグナロック作戦では、ロイエンタールの指揮下でイゼルローン攻略戦に参加し、主に別働隊の副将としてその手腕を発揮しました。この際、不和になりがちなロイエンタールとレンネンカンプの間を取り持つなど、調整役としても重要な役割を果たしました。

ラグナロック作戦以降は、イゼルローン要塞の防衛を任されますが、ヤン・ウェンリーによるイゼルローン再奪取作戦により要塞を失います。降格処分は免れたものの、フェザーン警備司令官に左遷されることになります。

フェザーンでは、爆弾テロに巻き込まれて負傷。この事件をきっかけに、ラングの動向に不信感を抱き、ケスラーにラングの調査を依頼します。その後、新帝国の首都がフェザーンに移転されると、警備司令官の職はケスラーに移り、ルッツは無任所となります。ラインハルトが新領土への行幸を発令すると、ルッツは無任所であることを理由に随行を願い出て、フェザーンを離れます。ガンダルヴァ星系の惑星ウルヴァシーで、ラインハルト一行が襲撃されると、ルッツは殿軍となり、銃撃戦を展開。ブリュンヒルトが離陸するまでの時間を稼ぎますが、衆寡敵せず、被弾し戦死しました。藤崎竜によるコミカライズ版では、ブリュンヒルト離陸後も2日間に渡って遊撃戦を展開し、火災に巻き込まれて焼死したとされています。

ルッツの死後、ラインハルトは「（死なずに元帥杖を頂くという）約束を破った罰だ」と言い放ち、元帥号を追贈しました。ロイエンタールも、ルッツの死によって自身の退路が断たれたと感じています。

能力

ルッツは、有能な艦隊司令官として、アムリッツァ会戦やリップシュタット戦役で数々の戦功を挙げています。ラグナロック作戦では、ロイエンタールの作戦の下、イゼルローン駐留艦隊を誘き寄せてトゥールハンマーを使用不能にするなど、その練達した指揮能力を示しました。

キルヒアイスと並んで、射撃の名手としても知られていますが、作中での描写は限られています。ウルヴァシーでの銃撃戦では、数人を撃退するものの、最終的には多勢に無勢で命を落としました。OVA版では、火薬式の銃の扱いについてラインハルトにアドバイスをする場面が追加されています。

人柄

普段は温和な性格ですが、かつての上官であったキルヒアイスを死に追いやったオーベルシュタインに対しては、強い嫌悪感を抱いています。ガイエスブルクの会議では怒りを露わにし、爆弾テロで負傷した後も、オーベルシュタインより先に死なないと発言するなど、その感情を隠そうとしませんでした。興奮すると瞳の色が藤色に変わることから、「ポーカーをするときにサングラスが必要な男」とビッテンフェルトに評されています。

僚友からの信頼も厚く、ロイエンタールとレンネンカンプが言い争った際には、ルッツが仲裁に入ると、ロイエンタールは語気を和らげ、レンネンカンプも大人しく引き下がりました。ウルヴァシーで殿軍を申し出たミュラーに対し、年長者として諭して退避させるなど、ラインハルトへの忠誠心と自身の立場をわきまえた行動を見せています。ラインハルトは、ルッツの死を知り、「余を最後まで信じていたのだな」「余は愚かであった」と後悔の念を吐露しており、ルッツの死がラインハルトに大きな喪失感を与えたことがうかがえます。

家族

独身でしたが、フェザーンでの爆弾テロで負傷した際に出会った看護婦のクララと婚約していました。クララは後に、従軍看護婦育成のための奨学金「ルッツ基金」の運営メンバーに参加しています。また、妹がおり、その夫であるユリウス・エルスハイマーは、ロイエンタールのもとで新領土の民事長官を務めています。

声優

堀勝之祐（OVA）
野島裕史（Die Neue These）

その他

アニメ版における作画モデルは、ハリソン・フォードであるとされています（「ロマンアルバム」中の設定解説より）。

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