コロブス亜科

コロブス亜科（Colobinae）

哺乳類の霊長目オナガザル科に属する一群であり、彼らは主にアフリカ大陸の赤道地帯から、南アジア、東南アジアにかけて広く生息しています。生息環境の中心は森林ですが、一部の種は乾燥した疎林や、人間の活動が及ぶ農耕地、あるいは市街地で見られることもあります。

形態

コロブス亜科のサルたちは、いくつかの独特な形態的特徴を持っています。食べ物を一時的に蓄えるための頬袋を持たず、多くの種で下顎の切歯（門歯）が上顎よりも前方に突き出ているのが見られます。また、臼歯の咬頭（こうとう）が発達していることも特徴の一つです。

彼らの最も際立った特徴は、葉を主食とすることに適応した消化器系にあります。発達した唾液腺を持ち、胃が二つの部屋に分かれた特殊な構造をしています。この構造により、胃内を常に酸性に保つことなく、共生するバクテリアの働きで植物の葉を発酵・分解することができます。バクテリアは、葉の主成分であるセルロースの分解を助けるだけでなく、食物に含まれる毒素を中和する役割も担っています。さらに、胃がくびれて表面積が大きくなることで、栄養価の低い葉を大量に貯蔵したり、食物が胃を通過する時間を長くすることで発酵を促進するといった利点もあると考えられています。近年の研究では、苦味を感じる受容体の遺伝子に変異が生じ、苦味への感度が低下したことで、葉食に適応した可能性も示唆されています。

また、彼らの前足の第一指（親指）は退化傾向にあり、ほとんど見られない種も存在するほどです。代表的な属であるコロブス属の学名『Colobus』は、古代ギリシャ語で「ちぎれた」を意味する言葉に由来しており、これはまさにこの退化した親指の特徴から名付けられたものです。

分類

コロブス亜科に属する種は多様で、地理的な分布に基づいて、アフリカに分布する種をまとめたコロブス族（Colobini）と、アジアに分布する種をまとめたリーフモンキー族（Presbytini）に分ける説もあります。分子系統解析によると、アフリカの種とアジアの種はおよそ1100万年から1000万年前に分岐したと考えられています。最古の化石記録としては、約1000万年前のものとされるマイクロコロブス・トゥゲネンシスがアフリカで発見されています。

アジアに分布する種の中には、地域やグループによって「ラングール」（主に南アジア）、「ルトン」（マレー語由来）、「リーフモンキー」など、様々な呼称で呼ばれるものがいます。リーフモンキーという言葉は、旧リーフモンキー属全体を指すこともありますが、特に島嶼部に生息する種に対して用いられることが多いです。

生態

コロブス亜科のサルたちは、主食である葉が比較的どこにでも豊富に存在する影響か、彼らは広い範囲を移動することが少なく、比較的狭い行動圏で生活する傾向があります。行動圏の平均は約30ヘクタールとされますが、種によっては6ヘクタールから1300ヘクタールと大きく変動することもあります。シシバナザル属のように、標高の高い地域に生息し冬季がある環境に適応した種では、行動圏や一日の移動距離が大きいという報告もあります。また、果実や花が豊富に実る時期には、行動圏が拡大する傾向が見られる種もいます。

彼らの攻撃行動や性行動、社会的な行動は、他の多くの霊長類に比べてあまり複雑ではありません。これは、消化に時間のかかる葉を大量に摂取するため、一日の大半を個々に採食に費やしていることや、樹上生活を送る種が多いため、捕食者からの危険が比較的少なく、協力して食物を探したり、捕食者を警戒するといった社会的な行動が発達する機会が少ないことなどが原因であると示唆されています。実際、彼らは一日の活動時間のうち、休息に充てる時間が非常に長い（例えばテングザルでは昼間の76%）ことが知られていますが、これは葉の消化に非常に時間がかかるためであると考えられています。

食性は、ほぼ例外なく植物の葉に大きく依存しています。一部には葉以外の食物に関する報告例がほとんどない種もいますが、多くの種は葉の他に、植物の茎、蕾、花、果実、種子なども食べます。さらに、キノコ、地衣類、朽木、虫こぶ、昆虫などを摂取する種も確認されています。葉を主食とする一方で、ジャワルトンやカオムラサキラングールのように、果実の採食時間が全体の半分近くを占める種も存在します。彼らは通常、落ち着いた場所を見つけると座り込み、長時間にわたって採食を行います。

繁殖においては、一度に産む幼獣は1頭が一般的ですが、まれに2頭を出産することもあります。

人間との関わり

コロブス亜科のサルたちは、地域によって人間との様々な関わりを持っています。特にハヌマンラングール類は、インドの叙事詩に登場する猿神ハヌマーンと結び付けられ、神聖な動物として崇拝の対象とされることもあります。一方で、食用として狩猟されたり、その美しい毛皮が利用されることもあります。さらに、腸内に形成される凝固物（結石）などが、伝統医学において薬用になると信じられている地域も存在します。

しかしながら、多くの種が危機に瀕しています。森林伐採や農地開発といった人間の活動による生息環境の破壊は、彼らの生存を脅かす最大の要因の一つです。また、食用や伝統薬の原料としての狩猟が、一部の種の生息数減少に拍車をかけています。これらの要因により、多くのコロブス亜科の種でその数が減少し、保全の必要性が叫ばれています。

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