コング山脈

コング山脈: 歴史的誤解の象徴

コング山脈（コングさんみゃく）は、18世紀末から19世紀半ばまで、アフリカの地図に描かれていた架空の山脈です。この山脈は、実際には存在しないにもかかわらず、多くの探検家や地図製作者によって信じられていました。

起源と名称の由来

コング山脈の存在が初めて地図に記載されたのは1798年、イングランドの地図学者ジェイムズ・レンネルによるものでした。彼はスコットランドの探検家ムンゴ・パークの情報をもとに、この山脈をアフリカの地図に描きました。その起点は、現在のブルキナファソ・ワンガラ付近に設定されており、山脈は高地から始まり中部アフリカにまで広がると考えられていました。

この山脈の名称は、12世紀頃に栄えたコングという町に由来しています。この町は一時、コング帝国の首都でもありました。地図に描かれてから、多くの探検家がアフリカの西部を探索し、コング山脈がどうしても実在しているものと信じられていました。

その後の地図製作と探検

続いて登場したドイツの地図製作者ヨハン・ライネッケも、1804年の地図にこの山脈を記載しました。さらに1805年には、イングランドのジョン・ケリーがコング山脈が幻のムーン山脈と繋がっていると初めて記載しました。このような記載は、研究や探索が進むにつれて多くの探検家に信じられ続けました。

19世紀末までに、数多くの探検家が実際にこの地域を訪れたものの、誰ひとりとしてコング山脈の非実在性に気づくことはありませんでした。フランスの探検家ルネ・カイエやイギリスのリチャード・レモン・ランダー兄弟、ニジェール川の水源を調査したスコットランドのヒュー・クラッパートンなど、この地域の実態に注目した探検家たちが存在しましたが、彼らもこの山脈の存在を疑っていませんでした。

実際、アメリカの歴史学者が行った調査によれば、1798年から1892年の間にコング山脈が記載された地図は40件以上にのぼります。

山脈の消失と再評価

1887年から1889年の間に探検を行ったフランスの探検家ルイ・ギュスターヴ・ビンガーは、詳細な調査を経てこの山脈が存在しないことを報告しました。この発表がきっかけとなり、コング山脈は徐々に地図から姿を消していきました。しかし、1928年に発表されたバーソロミューのオクスフォード・アドバンスト・アトラスには依然として描かれているケースもありました。

さらに、1995年に発表されたジョン・ポール・グードの世界地図にも、誤ってコング山脈が掲載されてしまいました。このように、コング山脈は長い間、地図の中に実在し続け、さまざまな探検の歴史を織り成していたことが伺えます。

まとめ

コング山脈は、架空の存在ながらも多くの探検家や地図製作者に影響を与え続けてきた歴史的な象徴です。この山脈のストーリーは、科学の進展とともに誤解が解消されていく過程を示しており、地理学や探検の歴史において重要な意味を持っています。

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