コンレール

コンレール：北東部の鉄道再編と興亡

コンレール（Consolidated Rail Corporation、略称CR）は、アメリカ合衆国北東部において、かつて存在した重要な鉄道会社です。1970年代、アメリカ北東部の鉄道業界は、ペンシルバニア鉄道やニューヨーク・セントラル鉄道などの大手私鉄の相次ぐ経営破綻によって深刻な危機に瀕していました。その中で、財政難に苦しむ複数の鉄道会社の再編を目的として、1976年4月1日、連邦政府の支援のもと設立されました。

設立までの道のり：破綻と再編

1970年代初頭、アメリカ北東部の鉄道業界は、長年続いた競争激化と経営の悪化により衰退の一途を辿っていました。特に、1970年に破産を宣言したペン・セントラル鉄道（ニューヨーク・セントラル鉄道とペンシルバニア鉄道の合併会社）の倒産は、アメリカ鉄道史における大きな転換点となりました。この事態を受け、政府は長距離旅客輸送を担うアムトラックを設立しましたが、貨物輸送の分野では更なる対策が求められていました。

1973年、連邦議会は破綻した鉄道会社の再編を目指し、広域鉄道再構築法（Regional Rail Reorganization Act、3R法）を制定しました。この法律に基づき、アメリカ鉄道連盟（USRA）が設立され、コンレールの設立に向けた準備が進められました。USRAは、破綻した鉄道会社の路線の中から、存続させる路線を選定する作業を行いました。この過程では、各州政府や他の交通事業者との協議なども行われ、最終的にペン・セントラル鉄道をはじめとする複数の鉄道会社の路線がコンレールに引き継がれることになりました。

コンレールの設立は、単なる鉄道会社の合併ではなく、政府主導による大規模な産業再編でした。破綻した鉄道の資産や路線を整理し、効率的な鉄道網を構築することが目的でした。この再編には、経営再建、労働組合との交渉、そして地方自治体との調整など、多くの困難が伴いました。

巨大システムの構築と再生：経営改革と民営化

1976年4月1日、コンレールは営業を開始しました。当初は多額の政府支援にもかかわらず、経営は赤字が続き、大きな課題に直面しました。しかし、1980年代に入ると、スタガーズ鉄道法（Staggers Rail Act）による規制緩和と、L・スタンリー・クレーンCEOによる大胆な経営改革によって、コンレールは劇的な変化を遂げました。

スタガーズ鉄道法は、鉄道の料金や路線の運営に関する規制を緩和し、競争を促進しました。これにより、コンレールは料金改定や不採算路線の廃止などの経営改善策を迅速に実施することが可能となり、黒字転換に成功しました。また、通勤列車の運行を地方自治体に移管するなどの事業再編も積極的に進めました。

1980年代後半には、コンレールは民営化に向け動き出しました。1986年のコンレール民営化法の成立を受け、1987年には米国史上最大規模の株式公開が行われ、コンレールは民間の企業となりました。民営化は、コンレールを政府の財政負担から解放し、市場原理に基づく効率的な経営を促進しました。

分割吸収：競争と終焉

民営化後、コンレールは大きな成功を収め、CSXトランスポーテーションとノーフォーク・サザン鉄道という二大私鉄の買収対象となりました。両社は激しい買収合戦を繰り広げましたが、最終的には資産を分割する形で合意に達しました。1999年、コンレールはCSXとノーフォーク・サザン鉄道に分割吸収され、その歴史に幕を閉じました。コンレールの資産は、CSXとノーフォーク・サザン鉄道によって運用され、北東部の鉄道網は新たな体制へと移行しました。コンレールの分割吸収は、激しい競争と規制緩和の時代における、企業再編の一つの事例として、今日まで語り継がれています。

参考文献

Timothy Jacobs, The History of the Pennsylvania Railroad, ISBN 0-517-63351-5
PRR Chronology
H. Roger Grant, Life and death of Erie Lackawanna, Trains (magazine) February 1992
Bill Stephens and Craig Sanders, Cleveland: center of controversy, Trains (magazine) July 1998

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