コード (暗号)

コード：秘密のメッセージを伝えるための技法

コードとは、メッセージを秘匿するための暗号の一種です。特定の知識や情報を持たない者には理解できないように、単語やフレーズを事前に決められた別の単語、無意味な文字列、あるいは数字などに置き換えることで、機密情報を守ります。軍事作戦など、大規模な活動で大量の情報をやり取りする際に特に有効な手段でした。

コードとサイファ：その違い

コードとしばしば混同される「サイファ」とは、文字や記号の配置を操作してメッセージを隠す暗号化手法です。現代の暗号学では、サイファの安全性は鍵の秘匿性に依存し、暗号化方式そのものが秘密である必要はありません。一方、コードは方式自体が秘密であることが重要です。歴史的には、サイファとは異なる発展を遂げてきたため、暗号学では別個に扱われます。

コードの種類：プレーコードとエンサイファードコード

コードは大きく分けて、「プレーコード」と「エンサイファードコード」の2種類があります。

プレーコード

プレーコード、またはベースコード、生コードとも呼ばれ、コード換字のみを用いたシンプルな暗号化方式です。単語やフレーズを直接、事前に決められたコードに置き換えます。コードブックと呼ばれる対応表を用いることが多く、組織の特性や知識が反映されるため、解読できれば組織の秘密情報まで推測できる可能性があります。コードトーカーのように、暗号表を暗記して使用するケースもありました。

エンサイファードコード

エンサイファードコード、またはスーパーエンサイファードコード、リサイファードコードとも呼ばれます。プレーコードで換字した後に、さらにサイファで暗号化することで、セキュリティを強化した方式です。プレーコードが漏洩した際の緊急措置として、あるいは市販の商用コードをプレーコードとして用いる場合などに利用されました。

通信文の暗号化：平文とコードの組み合わせ

機密性の高い情報のみをコード化し、残りは平文のままにする方法と、すべての単語をコード化する方式があります。前者は簡便ですがセキュリティは低く、後者は商社や外交、軍事など大規模な通信に用いられます。単語をコード化する際には、スペルアウトや補遺、付録辞書といった手法が用いられます。

スペルアウト

事前に合意が不要な方法で、単語を構成する文字や音節を個別にコード化します。解読の際に手がかりとなりやすいという欠点があります。

補遺

スペアグループとも呼ばれ、将来追加する可能性のある単語に対応するコードをあらかじめ用意しておく方法です。

付録辞書

人名や地名、商品名など、頻繁に変更される単語を別冊の辞書にまとめ、本編のコードブックと併用する方法です。

コードブックの種類：1冊制と2冊制

コードブックは、「1冊制」と「2冊制」があります。1冊制は、原語と暗号語の対応に何らかの規則性があり、暗号化と復号に同じ表を使用できますが、規則性が攻撃の糸口となる可能性があります。2冊制は、原語と暗号語の対応がランダムであり、暗号化と復号に別の表を使用するため、より高いセキュリティを実現できます。

コードのランダム化

コードブックの作成において、原語と暗号語の対応をランダムにすることが重要です。現代ではコンピュータアルゴリズムを用いることができますが、従来は単語カードを混ぜて取り出したり、乱数表を用いたりといった方法が用いられていました。

コードの具体例

歴史上、様々なコードが使用されてきました。ルイ14世の大暗号、日露戦争で使われた暗号、真珠湾攻撃で使われた暗号など、それぞれの時代背景や技術水準を反映した様々な例があります。

まとめ

コードは、歴史的に重要な役割を果たしてきた暗号化手法です。その種類、仕組み、そして具体的な例を知ることで、暗号の歴史や技術に対する理解を深めることができます。

もう一度検索