コードネーム (和音記号)

コードネームは、アメリカで開発された和音記号であり、主にポピュラー音楽の解析に用いられています。アメリカのみならず、世界中で広く通用しているのが特徴です。ただし、アメリカ本国では「コードシンボル」と呼ばれ、「コードネーム」という呼称は一般的ではありません。

コードネームの成立

コードネームの発案者は、ファーディ・グローフェとジェリー・ロール・モートンであるとされていますが、彼らの証言は残っていません。コードネーム全体の総合的な使用法を提唱した書籍として、ジョージ・ラッセルの「リディアン・クロマティック・コンセプト」が挙げられます。その後、バークリー音楽院の「Using Upper-structure Triads」によって、コードネームの体系が完成されたと考えるのが妥当でしょう。

伝統的なローマ数字の記譜法をアルファベットに置き換える試みは以前からありましたが、具体的な使用法は確立されていませんでした。ジョージ・ラッセルは、スクリャービンの「縦にすればコード、横にすればモード」というロシア和声学の概念からヒントを得て、リディア旋法に基づいた9th、11th、13thコードの組織化に成功しました。この理論は日本でも武満徹が私訳を試みるなど、大きな影響を与えました。

バークリー音楽院の教員を含む多くのジャズミュージシャンは、11thや13thコードの上部構造を取り出すことで、独立した三和音として解釈できると主張しました。この考え方が、現在のコードネームの使われ方に繋がっています。

コードネームの特徴

コードネームは、数字の横にシャープやフラットを付加するなど、数字付き低音との類似点が見られます。転調進行を明示せずとも、すべてのコードを同一の音高構造として扱えるため、トニック、ドミナント、サブドミナントといった機能和声の概念にとらわれずに使用できるのが利点です。ただし、複数の声部を組織化するには不向きです。

また、sus4のような特定の音高構造を単独で使用できるため、機能和声学とは異なる雰囲気を作り出すことができます。機能和声学では、sus4の音は解決されることが前提ですが、コードネームでは必ずしも解決を必要としません。この解決を放棄したのがクロード・ドビュッシーですが、それ以前の和声学では解決が必須とされていました。

参考文献

Berklee Jazz Keyboard Harmony: Using Upper-structure Triads (2015, second edition) ISBN 978-0-87639-1-549
Lydian Chromatic Concept of Tonal Organization for Improvisation (1953, first edition) ISBN 978-9-99989-1-110

関連項目

数字付き低音
和音

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