コーネリアス・ウォルフォード

コーネリアス・ウォルフォード（Cornelius Walford, 1827年4月2日 - 1885年9月28日）は、イギリスの著作家であり、弁護士としても活躍した人物です。ロンドンのカーテン街で生まれ、15歳で事務弁護士の秘書として社会に出ました。その後、1848年にはウィタムで保険の調査兼代理業を始め、1857年には英国保険代理協会の会員となり、王立統計学会にも加入しました。この時期、匿名で執筆した『The Insurance Guide and Handbook』は、アメリカで海賊版が出回るほどの人気を博しました。

1858年にはミドル・テンプルに入学し、1860年には上級弁護士となりました。その後、エドウィン・チャドウィックらのもとで働き、東ロンドン銀行の理事や、アメリカの対ヨーロッパ・ニューヨーク保険協会の支配人などを歴任しました。ウォルフォードは、保険問題に関する著述活動を精力的に行い、その専門知識は高く評価されました。1875年には王立歴史学会の特別会員に選ばれ、1884年にはサミュエル・ブラウン賞を受賞するなど、彼の業績は多方面から認められています。

保険事業に携わる中で、ウォルフォードは社会組織や制度にも関心を広げ、後半生ではそれらの歴史的研究に力を注ぎました。特に、市場の発達史に深い関心を持ち、その研究成果は著書『Fairs, Past and Present』、日本語訳では『市の社会史』にまとめられています。この著書では、ケンブリッジのスターブリッジの市やロンドンのバーソロミューの市など、イギリス各地のフェアやマーケットを中心に、市場の歴史的な発展過程を詳細に論じています。ウォルフォードの研究は、単なる歴史的事実の記述にとどまらず、社会構造や経済活動の変化を捉えようとする意欲的なものであり、現代においても価値ある研究として評価されています。

ウォルフォードの主要な著作としては、『The Insurance Guide and Handbook』（1857年）と『Fairs, Past and Present』（1883年）が挙げられます。『Fairs, Past and Present』は、中村勝によって『市の社会史』として翻訳され、1984年にそしえてから出版されました。この日本語訳は、ウォルフォードの研究を日本に紹介する上で大きな役割を果たしました。

ウォルフォードは、保険業界での実務経験と弁護士としての専門知識、そして歴史研究への情熱を兼ね備えた人物であり、その多岐にわたる活動は、19世紀のイギリス社会における知的な活動の幅広さを示すものと言えるでしょう。

もう一度検索