コーネリウス・ヴァン・ティル

コーネリウス・ヴァン・ティル（Cornelius Van Til, 1895年5月3日 - 1987年4月17日）は、アメリカ合衆国で活躍した著名な神学者です。彼は改革派の代表的な弁証学者であり、正統長老教会の牧師としてもその生涯を捧げました。特に、ウェストミンスター神学校での長年にわたる教育活動は、多くの神学生に影響を与え、彼の神学的遺産は今日まで受け継がれています。

生涯

1895年、ヴァン・ティルはオランダのフローテハストで生まれました。1905年に一家でアメリカに移住し、カルヴィン大学を卒業後、カルヴィン神学校でルイス・ベルコフに師事しました。その後、プリンストン神学校に転籍し、ドイツ観念論の研究で博士号を取得しました。

1928年にプリンストン神学校で博士号を取得後、講師として教鞭を執りました。1929年には、ウェストミンスター神学校に弁証学の主任教授として迎えられ、以後50年間にわたり教職の養成に尽力しました。また、1939年からは正統長老教会の牧師としても奉仕し、その信仰と学識をもって多くの人々に影響を与えました。1972年にウェストミンスター神学校を引退するまで、彼の教育活動は絶えることなく続けられました。

神学

ヴァン・ティルの神学は、古プリンストン神学の後継者として位置づけられます。彼は、伝統的なキリスト教神学の枠組みの中で、弁証学の再構成を試み、自由主義神学（リベラル）を批判しました。特に、彼の提唱した「前提主義(Presuppositionalism)」と呼ばれる弁証学の方法論は、福音主義神学の発展に大きく貢献しました。これは、キリスト教信仰の前提を非キリスト教的な前提と比較し、キリスト教的真理の優位性を主張するものです。

ヴァン・ティルは、人間の理性や経験に依存するのではなく、聖書の啓示を知識の基礎とすることを強調しました。彼の神学は、神の主権と人間の有限性を強調し、人間の理性だけで神の真理を理解することは不可能であると説いています。この前提主義的なアプローチは、後の神学者や弁証学者に大きな影響を与え、現代のキリスト教弁証学の重要な基盤となりました。

著書

ヴァン・ティルは、数多くの著作を通じて自身の神学的思想を広めました。彼の著作は、弁証学だけでなく、キリスト教の知識論、倫理学、神学の多岐にわたっています。主な著作には以下のようなものがあります。

『ヴァン・ティルの「十戒」』（松田一男訳、いのちのことば社）
『改革派キリスト教弁証論：Van Tilの弁証論』（聖恵授産所出版部）
『予定論と一般恩恵』（聖恵授産所出版部）
『一般恩恵（Common Grace, 1947年）』
『The Defense of the faith（1955年）』
『A Christian Theory of Knowledge（1969年）』

これらの著作は、ヴァン・ティルの思想を理解するための重要な資料であり、彼の神学的な洞察を今日に伝えています。

教え子

ヴァン・ティルの教え子には、後に著名な神学者や著述家となった人物が多く含まれています。その中でも特に有名なのは、以下の人物です。

フランシス・シェーファー
宇田進
丸山忠孝

これらの教え子たちは、ヴァン・ティルの影響を受けながら、それぞれの分野で独自の業績を上げ、その思想を広める上で重要な役割を果たしました。

関連項目

ヴァン・ティルの神学的な背景を理解する上で、以下の人物の思想も参考になります。

ヘルマン・バーフィンク

ヘルマン・バーフィンクは、ヴァン・ティルに大きな影響を与えた神学者の一人であり、彼の神学的な基礎を形成する上で重要な役割を果たしました。

コーネリウス・ヴァン・ティルは、その生涯を通じて、改革派の神学、特に弁証学の分野において、多大な貢献をしました。彼の思想は、現代のキリスト教神学に深く根付き、今日でも多くの神学者や信徒に影響を与え続けています。

もう一度検索