福音主義

福音主義（ふくいんしゅぎ）とは

福音主義はキリスト教における概念で、主に二つの異なる意味を持ちます。一つは、主にドイツ語圏に見られる狭義の福音主義で、16世紀の宗教改革にその起源を持ち、ルター派教会や改革派教会からなる伝統を基盤とする教派を指します。もう一つは、広義の福音主義で、英語圏、特に米国や英国において聖書信仰を基とした保守的な宗教的運動を示しています。

ドイツ語圏における「evangelisch」

ドイツ語での「evangelisch」は古代ギリシア語の「福音」を指し、特にルターやカルヴァンの教えに基づく教会、すなわち福音主義教会を示します。その中には、州教会として公認され、多くの信徒が所属するルター派教会と改革派教会が存在します。また、ルター派と改革派の教会が合同して、一つの福音主義教会を形成することもあります。

近年、語義は広がり、ドイツのプロテスタント信徒は自らの信仰を「evangelisch」と表現することが多くなりました。教会税の登録の際には、たとえば「ルター派」や「改革派」という用語は使われず、この「evangelisch」という用語が用いられ、教派の枠を越えた統一的な信仰表現を示すようになっています。

福音主義の歴史的背景

福音主義（evangelisch）の概念は宗教改革者マルティン・ルターによって、救いについての信仰を強調する形で用いられました。ルターは「福音」を、人がイエス・キリストへの信仰によってのみ救われることとの関連づけて宣教しました。そのため、「福音主義」はキリスト教の中心的な要素となり、教団の名称においても重要な位置を占めるようになりました。

1653年以降、公に「福音ルター派教会」や「改革派教会」と名乗る教団が認知され、1817年には両教派が合同しプロイセン福音主義教会が成立しました。このように、「福音主義」という言葉は、教派の枠組みを超えた広がりを持つようになりました。

福音派との違い

ドイツ語圏では、福音主義と「福音派」（エヴァンゲリカール）を混同しないことが重要です。福音派は主に英語圏におけるプロテスタントの中で形成された保守派の運動を指し、個々の信仰や個人の敬虔さが重んじられます。ドイツにおける福音派は、伝統的な福音主義教会に属する信徒の中にも多数存在します。

英語圏における「evangelical」

英語の「evangelical」は、主に米国や英国における保守派の信仰運動を指します。この運動は、福音主義の教義を現代化・簡素化することを強調し、従来の教派の伝統的礼拝様式を否定する傾向があります。このような中で、福音主義と福音派の関係は複雑で、共通点と相違点を理解することが重要です。

まとめ

福音主義は、キリスト教の中での重要な流れであり、特にドイツ語圏での宗教改革の影響を受けた概念です。その広がりと変遷を理解することで、信仰の多様性や進化をより深く認識できることでしょう。特に、現代の宗教的状況において、福音主義と福音派の相違を意識することは、教義や教派の理解を助けることにつながります。

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