コーヒー・セレモニー

コーヒーセレモニー：エチオピアとエリトリアの伝統

コーヒーセレモニーは、エチオピアとエリトリアで受け継がれてきた伝統的な習慣で、単なるコーヒーを飲む行為を儀式化したものです。エチオピアでは「カリオモン」と呼ばれ、「カリ」はコーヒーノキの葉、「オモン」は「一緒に」を意味します。この儀式は、日本の茶道のように、精神的な要素や教養を含む文化的な習慣であり、他者への感謝ともてなしの精神を表すものです。

女性が担う役割

コーヒーセレモニーは主に女性によって執り行われます。エチオピアでは、結婚前の女性が身につけるべき作法の一つとされており、冠婚葬祭や大切な客を迎える際に実施されます。使用されるポットやカップなどの茶器は、女性が実母から、または嫁ぎ先で代々受け継いできたものを用いることもあります。

儀式の流れ

コーヒーセレモニーは、生豆を煎るところから始まり、3杯のコーヒーを飲むことが正式とされており、1時間半から2時間以上かかることもあります。この間、香が焚かれ、客はパンやポップコーン（ファンディシャ）などを食べながら待ちます。

使用される道具

コーヒーセレモニーで使用される道具には、以下のようなものがあります。

豆を煎るための道具
七輪状の炉
鉄鍋
豆を粉にするための道具
臼（ムカチャ）
杵（ザナザナ）
その他
ポット（ジャバナ）
カップ（フィンジャル）
うちわ（マラゲベ）
コーヒー煎り鉄板（ブラットマタツゥ）
煎り棒（マコヤ）
コーヒー煎り鍋（マンカシュケシャ）
茶菓子入れ（ムダイまたはマッソブワーク）
ジャバナ置き（マトット）
茶道具台（ラカポッツ）
素焼きコーヒーポット（ジャバナ）
コーヒーカップ（シニー）
木臼（ムカチャ）
棒（ゼナゼナ）
豆のさまし皿（タァバ）
炭火鉢（マンデェジャ）
炭ばさみ（マコンティチャ）
セレモニーマスターの椅子（バリュチュマ）
香炉（ゲルゲラ）
青草（ケテマ）：敷物として使用

セレモニーの手順

1. 床に青草や花を敷き、カップを置く台を設えます（テーブルは使用しません）。
2. 松脂、乳香、アラビアガムなどで作られた香を焚きます。
3. コーヒーの生豆を鉄鍋に入れ、水で洗います。
4. 鉄鍋を炉にかけて、豆を煎ります。
5. 煎り上がった豆を客に提示し、香りを嗅がせます。
6. 客が焙煎に満足したら、豆を臼と杵で潰して粉状にします。
7. 水とコーヒーの粉をポットに入れ、火にかけて沸騰させます。
8. 沸騰したら、カップにコーヒーを注ぎ、再びポットに戻す動作を繰り返します。
9. 1煎目はアボル（Abol）と呼ばれ、少量を大地に注ぐ真似をするか、別の器に出した後、カップに注ぎ分け、主賓や年長者から先にコーヒーを勧めます。古い作法では塩を入れて飲むこともありましたが、現在は砂糖が一般的で、乳やバターを入れることもあります。
10. 2煎目はトーナ（Tona）と言います。
11. 3煎目はバラカ（Baraka、「祝福」）と呼ばれ、客の求めに応じて出されます。客は3煎目を、迎えてくれた家族や村の幸せと無事を祈りながら飲みます。

コーヒーセレモニーは、エチオピアとエリトリアの人々の生活に深く根ざした文化であり、単なる飲み物としてのコーヒー以上の意味を持つ、人々の絆を深める大切な儀式と言えるでしょう。

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