コープレイ

コープレイ：幻のウシ科動物

コープレイ( Bos sauveli )は、ウシ科ウシ属に分類される大型の偶蹄類です。1937年、カンボジアで初めて発見されたこの動物は、かつてカンボジア北部、ラオス南部、ベトナム西部、タイ東部の森林地帯に生息していました。しかし、近年の調査では、個体数は著しく減少しており、2007年時点ではカンボジアに250頭ほどしか生息していない、もしくは既に絶滅していると考えられています。その希少性から、コープレイは絶滅危惧種の代表例として知られています。

形態

コープレイは、肩高170～190cm、体重910kgに達する大型の動物です。オスの方がメスよりも大型になり、他のウシ属と比較して細身で、脚と尾が比較的長いのが特徴です。背中にはコブがありますが、コブウシほどは発達していません。体色は茶褐色から灰色、または黒と変化に富み、年老いたオスは体色が濃くなる傾向があります。一方、脚の下部はオス・メス共に白い毛で覆われています。また、オスの首には肉垂と呼ばれるたるんだ皮膚が見られます。

オスとメスの両方が発達した角を持ちますが、その形状は異なります。メスは上に螺旋状に巻いた琴型、オスは前に突き出し広がったアーチ型をしています。鼻には溝があることもコープレイの特徴の一つです。

生態

コープレイは、背の低い森が点在する丘陵地帯に生息し、昼行性です。昼間は森の中で過ごし、夜は開けた場所で草を食べて過ごします。通常はメスと子供からなる20頭程度の群れで生活しますが、乾季にはオスも群れに加わることもあります。彼らの生活様式や社会構造については、未だ解明されていない部分が多く残されています。

人間との関係

コープレイは、発見された時点ですでに1000頭程度しか生息していなかったと推定されています。その後、人間の活動が個体数減少に大きく影響しました。住民や兵士による狩猟、家畜から感染する伝染病、そして何より生息地の破壊・減少が、コープレイを絶滅の危機に追いやりました。1983年を最後に確実な目撃例がなく、現在では絶滅した可能性が高いとされています。

分類

コープレイは1937年、フランスの生物学者アシーユ・ユルバンによって発見され、その標本はヴァンセンヌ動物園に送られました。しかし、その後コープレイの分類学的分類については長らく議論が続きました。他のウシ属動物との雑種であるとする説、別属(Novibos)に分類すべきとする説、バンテンの亜種であるとする説、あるいは野生化した家畜であるとする説など、様々な仮説が提唱されました。

2004年、DNA分析の結果、コープレイが独立した野生種であるという報告がなされました。しかし、2006年にはミトコンドリアDNAの比較から、コブウシとバンテンの雑種が野生化したものであるという反論も出されました。その後、より広範囲なDNA分析と化石の調査が行われ、現在ではコープレイが独立した種であるという見解が主流となっています。

保全

コープレイは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されており、その保護は国際的な課題となっています。生息地の保全、違法狩猟の阻止、そして遺伝子レベルでの研究の進展が、コープレイの未来を左右する重要な要素となります。彼らの絶滅を防ぐためには、各国政府や国際機関による協調的な取り組みが不可欠です。コープレイの現状と将来の展望を理解し、保全活動への参加を促すことが、私たちの責務と言えるでしょう。

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