コーリング・オール・ステーションズ

『コーリング・オール・ステーションズ』は、イギリスを代表するプログレッシブ・ロック・バンド、ジェネシスが1997年9月1日にリリースした通算15枚目のスタジオ・アルバムです。これは、バンドにとって長年フロントマンを務めたフィル・コリンズが前年に脱退した後の最初の、そして現時点では最後のスタジオ作品となっています。

新たな船出と体制

フィル・コリンズの脱退という大きな転換期を経て、ジェネシスは新たな道を探りました。後任のリード・ボーカリストとして白羽の矢が立ったのは、スコットランドのロック・バンド、スティルトスキンのフロントマンとして知られていたレイ・ウイルソンです。彼のハスキーで力強い歌声は、従来のジェネシスのファンからは賛否両論を呼びましたが、バンドはトニー・バンクスとマイク・ラザフォードを中心に、新体制でのアルバム制作に取り組みました。

アルバムの内容と参加メンバー

本作の楽曲は、基本的にトニー・バンクスとマイク・ラザフォードによって作曲されていますが、「ノット・アバウト・アス」「スモール・トーク」「ゼア・マスト・ビー・サム・アザー・ウェイ」の3曲ではレイ・ウイルソンも共作者としてクレジットされています。

主要メンバーは以下の通りです。

トニー・バンクス: キーボード、アコースティックギター、バッキング・ボーカル
マイク・ラザフォード: ギター、ベース、バッキング・ボーカル
* レイ・ウイルソン: リード・ボーカル

特筆すべきは、ドラマーが固定されておらず、複数のミュージシャンが起用されている点です。ニック・ディヴァージリオ（スポックス・ビアード）とニア・Zという2名のドラマーが楽曲によって分担して演奏しています。ニック・ディヴァージリオは「エイリアン・アフタヌーン」の前半部分、「イフ・ザッツ・ホワット・ユー・ニード」、「アンサートゥン・ウェザー」、「スモール・トーク」でドラムとパーカッションを担当し、ニア・Zは「エイリアン・アフタヌーン」の後半部分を含む、それ以外のほとんどの楽曲でドラムとパーカッションを叩いています。

収録曲は以下の通りです。

1. 「コーリング・オール・ステーションズ」 - 5:43
2. 「コンゴ」 - 4:51
3. 「シップレックト」 - 4:23
4. 「エイリアン・アフタヌーン」 - 7:51
5. 「ノット・アバウト・アス」 - 4:38
6. 「イフ・ザッツ・ホワット・ユー・ニード」 - 5:12
7. 「ザ・ディヴァイディング・ライン」 - 7:45
8. 「アンサートゥン・ウェザー」 - 5:29
9. 「スモール・トーク」 - 5:02
10. 「ゼア・マスト・ビー・サム・アザー・ウェイ」 - 7:54
11. 「ワン・マンズ・フール」 - 8:46

商業的成功と評価

アルバムはリリース後、全英チャートで最高2位を記録するなど、商業的には一定の成功を収めました。しかし、批評家や古くからのファンからの評価は概して芳しくなく、新しいボーカリストの適性や音楽性の変化に対して厳しい意見が多く聞かれました。特に、プログレッシブ・ロック時代からのファンと、コリンズ時代のポップ路線からのファンの双方から、違和感を表明する声が上がったとされています。

その後の展開

アルバムのリリースとそれに伴うツアーの後、このレイ・ウイルソン体制は長くは続きませんでした。評価の低迷などが影響したと見られ、レイ・ウイルソンは間もなくバンドを脱退。結果的に、ジェネシスは本作の発表から程なくして活動を休止し、事実上の解散状態に入りました。そのため、『コーリング・オール・ステーションズ』は、彼らの輝かしい歴史における過渡期を捉えた作品であると同時に、長きにわたるバンドのスタジオ録音活動に一つの終止符を打った作品として位置づけられています。

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