コーリン・ロウ

コーリン・ロウは、1920年にイギリスのロザラムで生まれ、20世紀後半の建築界に大きな影響を与えた建築史家、建築家、そして都市計画家です。リヴァプール大学で建築を学んだ後、設計事務所勤務を経て、ヴァールブルク研究所で美術修士号を取得しました。その後、アメリカに渡り、テキサス大学やコーネル大学で教鞭を執りました。

ロウの業績で特筆すべきは、1920年代のル・コルビュジエの作品が、歴史的な建築、特にパッラーディオのヴィッラから深い影響を受けていることを最初に指摘した点です。彼は、近代建築を単なる技術的な進歩としてではなく、観念史や文化史と関連付けて考察しました。彼の講義は、特に16世紀イタリア建築史に関するものが有名で、建築関係者の間で広く共有されるほどでした。

教育者としてのロウは、プリンストン大学やハーバード大学でも客員教授を務め、多くの建築家に影響を与えました。晩年はワシントンD.C.に居を定め、過去の論文をまとめた著作を出版し、各地で教鞭を執りました。彼の著作は、建築界に大きな影響を与え続け、『マニエリスムと近代建築』、『コラージュ・シティ』などが日本語訳されています。

ロウは、その卓越した業績が評価され、1985年に米国建築家協会からトパーズ・メダルを、1995年にはイギリス王立建築家協会からRIBAゴールドメダルを受賞しました。1999年、アメリカのバージニア州で生涯を閉じましたが、彼の思想と研究は、現在もなお多くの建築家や研究者にとって重要な指針となっています。

ロウの著作には、以下のものがあります。

『マニエリスムと近代建築　コーリン・ロウ建築論選集』：自身の論文をまとめたもので、建築の歴史と理論に対する彼の深い洞察が示されています。
『コーリン・ロウは語る　回顧録と著作選』：自らの人生と、建築に対する考えを回顧した著作です。
『コラージュ・シティ』：フレッド・コッターとの共著で、都市計画に関する重要な視点を提供しています。
『イタリア十六世紀の建築』：レオン・ザトコウスキとの共著で、イタリア建築史における深い知識と分析が示されています。

これらの著作を通して、ロウは建築の世界において、歴史的文脈と理論的考察の重要性を強く訴え、後世に多大な影響を与えました。彼の研究は、単なる建築史の研究に留まらず、建築という行為そのものが持つ文化的、歴史的意味を問い直すものでした。

ロウの視点は、現代の建築家や都市計画家にとっても依然として重要であり、彼の功績は建築史における重要な一章として、今後も語り継がれるでしょう。

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