コールド・ブラッド/殺しの紋章

『コールド・ブラッド/殺しの紋章』（原題：Men of Respect）は、1990年に公開されたアメリカの犯罪ドラマ映画であり、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』を現代のマフィアの世界を舞台に翻案した作品です。監督・脚本はウィリアム・レイリーが務め、ジョン・タートゥーロが主人公のマイク・バタグリアを演じています。

物語は、マフィアのコルダノファミリーに所属する暗殺者マイク・バタリアが、組織の勢力拡大を快く思わず、単独で幹部たちを射殺する場面から始まります。時を同じくして、コルダノファミリーと対立するダミコファミリーは、その勢力に押され壊滅寸前の状況でした。そんな中、マイクの行動がダミコファミリーの危機を救ったことから、ボスのチャーリー・ダミコは彼を組織に迎え入れます。

コルダノファミリーからの報復を恐れるマイクは、友人のバンキーと共に逃亡中、ある家に隠れます。そこで、住人の男性から妻のルチアが占い師であることを教えられ、半信半疑ながらも占ってもらうことに。ルチアは、マイクが将来組織の大物になると予言し、そのためには自分の心に従って行動するよう助言します。その後、マイクはダミコファミリーの幹部カルメロ・ロッシに連れられ、チャーリーと対面。忠誠を誓い、ダミコファミリーの一員となります。

マイクは妻のルーシーと経営するレストランに帰宅し、占い師の予言を語りますが、現状に満足していると話します。しかし、野心家のルーシーは、彼にボスの座を狙うべきだと進言します。チャーリーへの忠誠心を口にするマイクに対して、ルーシーはさらに食い下がり、やがてマイクは「いつかボスになってやる」と宣言します。そして、その夜、チャーリーがマイクのレストランに宿泊することを知ったルーシーは、これを好機と捉え、マイクにチャーリー暗殺を促します。チャーリーを歓迎したマイクは、会合でロッシの引退が告げられるのを聞きます。チャーリーに褒められたマイクに対して、ルーシーはさらにチャーリー殺害を指示。嫌気が差したマイクと口論になりますが、最終的にはルーシーに言いくるめられて計画を実行に移します。

ルーシーが護衛を眠らせる中、マイクは苦悩しながらもチャーリーを殺害します。そして、ロッシと護衛に罪を被せ、翌朝、マフィアの大物マット・ダフィらの前で、起きてきた護衛の二人を射殺します。こうしてマイクは、組織内で頭角を現していくのです。

この映画には、ジョン・タートゥーロをはじめ、ピーター・ボイル、ロッド・スタイガー、スタンリー・トゥッチ、デニス・ファリーナなど、実力派俳優が出演しています。また、製作総指揮にはアーサー・ゴールドブラット、エリック・キテインが名を連ねています。音楽はマイシャ・シーガルが担当しました。映画は、シェイクスピアの原作をベースに、欲望、裏切り、そして運命といった普遍的なテーマを、現代的なマフィアの世界で描き出し、観客を魅了します。映像面では、撮影監督のボビー・ブコウスキーが、暗く陰鬱な雰囲気を効果的に表現しており、エリザベス・クリングの編集によって、物語はスピーディーかつ緊張感を持って展開されます。

『コールド・ブラッド/殺しの紋章』は、ただの犯罪ドラマではなく、人間の内面にある野心や欲望、そして運命に翻弄される姿を深く掘り下げた作品であり、シェイクスピアの古典劇を現代的な視点で再解釈した、見応えのある一作と言えるでしょう。

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