ゴッタルドベーストンネル

ゴッタルドベーストンネル

ゴッタルドベーストンネル（Gotthard Base Tunnel）は、スイスのアルプス山脈を貫通する2本の単線トンネルで構成される鉄道トンネルです。このトンネルは、スイスのウーリ州エルストフェルトとティチーノ州ボディオを結び、全長は57キロメートルに及びます。さらに、縦坑やその他の関連路を含めると、その総延長は153.5キロメートルに達します。2016年6月1日に開通したこのトンネルは、青函トンネルを抜いて世界最長の鉄道トンネルとなりました。学校などの公共施設を除いて旅客扱いをしないものの、緊急時には避難ルートとしても機能します。

開通の背景と目的

ゴッタルドベーストンネルの建設は、アルプトランジット計画の一環として進められました。この計画は、急峻な山岳ルートを効率的な高速鉄道と貨物輸送が通過できるルートに改良することを目指しています。このトンネルの開通により、旅客列車は最大250キロメートル毎時で走行可能となり、チューリッヒとミラノの間の所要時間が3.5時間から50分短縮されました。また、関連するツィンメルベルクベーストンネルとチェネリベーストンネルが完成すれば、さらなる時間短縮が見込まれています。

開通までの経緯

ゴッタルドベーストンネルの建設は1993年に始まり、試掘と準備作業が行われた後、2003年から機械掘削が開始されました。トンネルの中央部は発破により掘削され、外側はトンネルボーリングマシン（TBM）が使用されました。トンネル建設の施工中は、複数のアクセストンネルが掘削され、工期の短縮を図るために、エルストフェルト、アムステク、セドルン、ファイド、ボディオの5つの地点から掘削が行われました。

設備と運用

トンネル内には、325メートルごとに連絡路が設けられており、セドルンとファイドには多目的駅も設置されています。これらの駅には換気設備や機器が整備され、非常時には脱出路として活用されます。なお、セドルンにはポルタ・アルピナという駅が計画されていましたが、これは無期限延期となっています。トンネルは1日に200から300本の列車が通過し、貨物輸送の上限も引き上げられ、最大4,000トンまでの貨物輸送が可能となりました。

経済的影響

ゴッタルドベーストンネルの建設には、約80億3500万スイスフラン（約7850億円）という巨額の費用がかかりましたが、これは2014年には124億スイスフラン（約1兆4800億円）に達しました。この投資により、スイスの鉄道網は飛躍的に改善され、国際的な物流の効率も向上しました。特に、アルプス山脈を越える際の輸送障壁が解消されたことにより、南北の輸送が円滑に行えるようになっています。

最近の出来事

2023年8月には、ティチーノ州ファイドのトンネル南側入口から15キロメートルの地点で、貨物列車が脱線する事故が発生しました。このため、復旧作業が数ヶ月にわたり必要となり、旧線での迂回運転が行われています。

このように、ゴッタルドベーストンネルは、建設以降も多くの課題に直面しながらも、スイスとヨーロッパの交通網の要としての役割を担い続けています。

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