アルプトランジット計画

アルプトランジット計画

アルプトランジット計画は、アルプス山脈を南北に貫く新しい高速鉄道を建設するスイスの連邦プロジェクトです。既存のトンネルよりも数百メートル低い位置に新しい基底トンネルを建設することで、輸送能力の向上と所要時間の短縮を目指しています。ドイツ語では Neue Eisenbahn-Alpentransversale の頭文字から NEAT とも呼ばれます。

特徴

安全性を重視し、アルプトランジット計画の全てのトンネルでは、2本の単線トンネルが並行して建設されています。およそ300メートルおきに連絡路を設置し、非常時にはもう片方のトンネルを利用して避難できる設計となっています。

2つの主要ルート

アルプトランジット計画は、主に以下の2つのルートで構成されています。

ゴッタルドルート

ゴッタルドルートは、ゴッタルド、ツィンメルベルク、チェネリの新しい基底トンネルから構成されています。建設はアルプトランジット・ゴッタルド株式会社が担当しています。

ゴッタルドベーストンネルは、全長57km。青函トンネルを抜き、開通当時は世界最長の鉄道トンネルでした。このルートは、最大標高550mで最初の平坦なアルプス縦貫鉄道となるべく設計されており、チューリッヒからミラノまでの所要時間を現在の4時間から2時間30分に短縮する効果が見込まれています。

レッチュベルクルート

レッチュベルクルートは、ベルン・アルプスを貫くレッチュベルクベーストンネルから構成されています。建設はBLS アルプトランジット・レッチュベルク株式会社が担当しました。

全長34.6kmのレッチュベルクベーストンネルは、アルプトランジット計画で最初に完成した区間です。バーゼル - オルテン - ベルン - ブリーク - ドモドッソラ - ミラノを結ぶ西側の交通路として機能しており、輸送力の増強に貢献しています。

政治的背景

アルプトランジット計画は、単に鉄道を建設するだけでなく、スイスの交通政策や欧州連合（EU）との関係にも深く関わっています。

スイスは、アルプス山脈を通過するトラックによる貨物輸送を制限しようとEUと交渉してきましたが、合意には至りませんでした。そのため、スイスは国内・国際を含む全てのトラックに対して、LSVAと呼ばれる貨物輸送車両への税金を課すことを決定。この税収を元に、アルプス山脈を縦貫する新しい鉄道を建設する計画が持ち上がりました。

この計画はEUにも受け入れられましたが、トラックの通行制限に関する意見の相違がありました。しかし、最終的には合意に至り、アルプトランジット計画が実現することになりました。

さらに、スイスの法律では、アルプスでの道路建設を制限し、鉄道へのモーダルシフトを推進する政策が採られています。アルプトランジット計画は、この政策を具現化する重要なプロジェクトとしての役割も担っています。

財源

アルプトランジット計画の全体のコストは、莫大なものになります。スイス国民は投票でこの計画を承認し、新しい公共交通基金による財務計画を再承認しました。この基金は、貨物車両に対する税金やガソリン税、消費税の一部などを財源としており、アルプトランジット計画だけでなく、バーン2000計画にも充てられています。

まとめ

アルプトランジット計画は、スイスの交通政策、環境保護、そしてEUとの関係が複雑に絡み合った、壮大なプロジェクトです。この計画の完成により、アルプスを越える鉄道輸送能力は飛躍的に向上し、ヨーロッパの物流に大きな影響を与えることが期待されています。

関連項目

スイスの鉄道
ゴッタルドベーストンネル
レッチュベルクベーストンネル
バーン2000計画

外部リンク

* AlpTransit.ch – アルプトランジット計画公式サイト

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