ゴットフリート3世 (ロートリンゲン公)

ゴットフリート3世（生年不詳 - 1069年12月）は、中世ヨーロッパにおいて重要な役割を果たした貴族です。彼は、上ロートリンゲン公（1044年 - 1047年）、トスカーナ辺境伯（1054年 - 1069年）、そして下ロートリンゲン公（1065年 - 1069年）という、複数の有力な地位を歴任しました。また、その風貌から「鬚公（Bearded）」とも呼ばれていました。

彼はアルデンヌ家の出身で、ロートリンゲン公ゴツェロ1世の長男として生まれました。彼の生涯は、神聖ローマ皇帝との対立や、イタリアにおける勢力拡大など、激動に満ちたものでした。

皇帝ハインリヒ3世との対立

1044年、父ゴツェロ1世が亡くなると、ゴットフリートはロートリンゲン公の相続を巡り、皇帝ハインリヒ3世と対立しました。ハインリヒ3世は、ゴットフリートに上ロートリンゲンを、弟のゴツェロ2世に下ロートリンゲンを分割して授封しました。この決定に不満を持ったゴットフリートは反論しましたが、ハインリヒ3世はこれを反逆とみなし、上ロートリンゲン公の地位を剥奪しました。ゴットフリートは皇帝と戦うも敗北し、一時的に拘束されましたが、後に上ロートリンゲン公の地位を再び与えられました。

しかし、1047年には、リエージュの併合を企て、ホラント伯、フランドル伯らと共にハインリヒ3世と再び対立し、再び上ロートリンゲン公位を失いました。彼は何度も皇帝に抵抗し、1049年には皇帝に降伏しましたが、その後の生涯も、様々な政治的な駆け引きや戦いに巻き込まれていきました。

イタリアにおける勢力拡大

1054年、ゴットフリートは、トスカーナ辺境伯ボニファーチオ4世の未亡人であったベアトリクスと結婚し、トスカーナ辺境伯となりました。これを機に、彼はイタリアでの勢力拡大を企て、フィレンツェ市民の暴動を鎮圧した後、エミリア、マルケ、ウンブリアへと勢力を拡大していきました。ハインリヒ3世はこれに対抗し、イタリアに進軍しましたが、ゴットフリートは戦わずにロートリンゲンへと逃亡し、妻子は皇帝に捕らえられました。

1056年、ハインリヒ3世が死去すると、彼はゴットフリートと和解し、捕らえられていた家族を解放しました。ゴットフリートは新帝ハインリヒ4世に臣従を誓う代わりに、ロートリンゲンとトスカーナの領有権を認めさせ、イタリアに戻りました。その後、教皇ウィクトル2世が亡くなると、フェルモ伯、スポレート公を兼任し、実弟を教皇ステファヌス9世に擁立するなど、イタリアでの影響力を強めていきました。

しかし、ステファヌス9世が翌年死去すると、教皇位を巡る争いが勃発し、ゴットフリートは反皇帝派のアレクサンデル2世を支持し、最終的に彼をローマ教皇に就任させることに成功しました。

下ロートリンゲン公として

1065年、下ロートリンゲン公であったルクセンブルク家のフリードリヒが亡くなると、ゴットフリートは下ロートリンゲン公位を授与されました。1066年には、教皇の要請に応じて、ローマ教皇領に侵攻したカプア公リッカルド1世を撃退するなど、その勢力はさらに拡大しました。

しかし、1069年、ゴットフリートはヴェルダンで亡くなり、その生涯を終えました。下ロートリンゲン公位は息子ゴットフリート4世が継ぎました。ゴットフリート4世はベアトリクスの娘マティルデと結婚し、その後の歴史に影響を与えることになります。

ゴットフリート3世は、その波乱に満ちた生涯を通じて、神聖ローマ帝国の政治情勢に大きな影響を与えた人物と言えるでしょう。

子女

先妻ドダとの間に、以下の子供をもうけました。

ゴットフリート4世（1040年頃 - 1076年） - 下ロートリンゲン公
イダ（1040年頃 - 1113年） - ブローニュ伯ウスタシュ2世と結婚、下ロートリンゲン公ゴドフロワ・ド・ブイヨン、エルサレム王ボードゥアン1世らの母。

後妻ベアトリクスとの間に以下の女子をもうけました。

* ヴィルトルーデ（? - 1093年） - アーダルベルト2世・フォン・カルフと結婚、ライン宮中伯ゴットフリート・フォン・カルフの母。

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