ゴッドフリー・ハウンズフィールド

ゴッドフリー・ニューボルド・ハウンスフィールド（Godfrey Newbold Hounsfield、1919年8月28日 - 2004年8月12日）は、イギリス出身の傑出した電子技術者であり、現代医学の診断技術に革命をもたらした人物です。彼は、コンピューターを活用した画期的なX線断層撮影（CT）技術を開発した功績が認められ、1979年にアラン・コーマックと共にノーベル生理学・医学賞を授与されました。彼の発明は、人体内部を非侵襲的に詳細に可視化することを可能にし、診断の精度と速度を飛躍的に向上させました。

ハウンスフィールドがCT開発に取り組んだ背景には、同時期にアラン・コーマックが発表していたCTの理論研究がありました。この理論に着想を得たハウンスフィールドは、1963年から1964年にかけて、英国の電機メーカーであるEMI社にて、同僚たちと共にその実用化を目指しました。彼らの最大の課題は、X線が物体を透過する際の微細な吸収率の違いを検知し、それをコンピュータでデジタル処理して断層像として再構成する技術を確立することでした。これは、従来の単純なX線撮影では得られない、体の内部の詳しい構造を知るための画期的な試みでした。

開発は試行錯誤の連続でした。装置の原理検証のため、まず牛の脳を対象とした実験が行われました。そして、自らの脳をスキャンするという実験を経て、性能を確信したハウンスフィールドは、1971年についにロンドンのアトキンソン・モーレイ病院で実際の患者への適用を試みました。脳に嚢胞を持つ患者のスキャンに成功し、その診断能力を示した結果は、翌1972年に世界に向けて発表され、医学界に大きな衝撃を与えました。さらに、脳だけでなく全身をスキャンできる汎用的な装置の開発にも取り組み、1975年には全身用CTスキャナを完成させました。この装置こそが、現在のCT装置の直接的な原型であり、その後の医用画像診断技術の発展に不可欠な基盤となりました。ハウンスフィールドの発明は、X線撮影の限界を打ち破り、人体の内部を詳細に捉えることを可能にした画期的なものであり、「X線発見以来の最大の発明」とも称され、診断技術の歴史におけるマイルストーンとなりました。

ハウンスフィールドの功績は広く認められ、多くの栄誉に輝きました。1975年には王立協会フェローに選出されたほか、ノーベル賞以外にも数々の権威ある賞を受賞しています。

1974年 - ヴィルヘルム・エクスナー・メダル
1975年 - ガードナー国際賞、ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞
1977年 - ハワード・N・ポッツ・メダル
1979年 - ノーベル生理学・医学賞

彼の名は、現代のCT画像解析における基本的な概念である「ハウンスフィールド単位（Hounsfield Unit, HU）」として、今もなお世界中で使われています。この単位は、X線の吸収率を相対的に示す指標であり、水の吸収率を0 HU、空気の吸収率を-1000 HUとして定義されます。様々な組織のCT値はこの単位で表され、診断に不可欠な情報を提供します。ただし、骨のCT値などについては、密度により変動するため、「骨は必ず+1000 HUである」といった単純な記述は正確ではありません。

ゴッドフリー・ニューボルド・ハウンスフィールドが開発したCT技術は、非侵襲的な画像診断を可能にし、病気の早期発見や正確な診断、治療方針の決定に不可欠なものとして、今日の医療において中心的な役割を担っています。彼の革新的な技術は、数えきれない人々の健康と命を救うことに貢献しており、その偉大な業績は今後も語り継がれていくでしょう。

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