ゴナ

ゴナ：日本のモダンゴシックの金字塔

写研が開発したゴナは、中村征宏氏によるデザインで知られるゴシック体フォントです。幾何学的なラインと均等な線の太さが特徴で、欧文フォントとの親和性も高く、多くのデザイナーに愛されてきました。本記事では、ゴナのデザイン、歴史、そして現代における評価について詳細に解説します。

デザインの特徴

ゴナは、従来のゴシック体に見られる角張ったデザインや、縦画のアクセントを廃し、すべての線が均一な太さを持つ幾何学的なフォルムを特徴としています。これは、欧文フォント、特にUniversやHelveticaとの併用を考慮した結果であり、混植時の違和感の低減に成功しています。

特に、平仮名の「な」の形状はゴナの特徴をよく表しています。右側の水平線と縦棒の上端が接続する独特のデザインは、先行するフォントにも見られますが、ゴナでは「ナ」の横画との高さの差が明確に表現されています。この点は、後発の「新ゴ」などとは異なる点です。

ゴナは超極太のゴナUから開発が始まりました。ボディいっぱいに文字を大きく配置することで、字間調整の必要性を減らし、従来のゴシック体よりも大きく、視認性の高い文字を実現しています。

歴史と影響

1975年、写植文字として最も太いゴシック体としてゴナUが登場しました。既存のゴシック体よりもはるかに太い書体は、写研からの依頼を受けた中村氏の提案によるものでした。その後、1979年にはゴナE、さらにゴナM、ゴナDBなどのファミリーが加わり、白抜きや影付きといったバリエーションも登場しました。

ゴナは、モリサワの新ゴシック体や、その他のゴシック体フォントにも多大な影響を与えたと言われています。その影響力の大きさを示すエピソードとして、1993年に写研がモリサワを著作権侵害で訴えた裁判があります。この裁判では、ゴシック体の範疇内でのデザインという判断から、写研の請求は退けられました。しかし、この訴訟は、書体デザイナーの権利や地位を考える上で重要な転換点となりました。

皮肉にも、この裁判とDTPの普及は「新ゴ＝ゴナに似た書体」という認識を広める結果となり、多くのグラフィックデザイナーがDTPを導入するきっかけとなりました。DTPの普及は新ゴの隆盛を促す一方、写植の衰退とともにゴナは徐々にその活躍の場を減らしていきました。

それでも、ゴナの高い評価は現在も続いています。書体デザイナーの竹下直幸氏は、「追従した同様のスタイルのゴシック体が増えた現在でも、色あせない完成度を誇る、モダンゴシックの代表と言える書体」と評しています。

ゴナは、サイン分野でも広く使用されてきました。都市高速道路の標識やJR東海の駅構内サインなどに採用されています。

ファミリー構成

ゴナファミリーは、太さやデザインバリエーションが豊富です。主なメンバーとして、ゴナL、ゴナM、ゴナD、ゴナDB、ゴナB、ゴナE、ゴナH、ゴナU、ゴナO（アウトライン）、ゴナOS（アウトライン影付き）、ゴナIN（インライン）、ゴナLB、ゴナかなO、ゴナかなW、ゴナかなCなどが挙げられます。

まとめ

ゴナは、その幾何学的な美しさ、高い視認性、そして歴史的背景から、現代においても重要なフォントとして評価されています。その影響は、後続の多くのゴシック体フォントに見ることができ、日本のタイポグラフィの歴史において、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。 ゴナのデザイン、歴史、そして現代における評価を理解することは、日本のタイポグラフィの歴史を理解する上で重要な一歩となるでしょう。

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