新ゴ

新ゴ（しんゴ）

新ゴは、日本の書体デザイン会社モリサワによって開発されたモダンゴシック体です。このフォントは、競合他社である写研の成功したディスプレイ書体「ゴナ」シリーズに対抗する形で誕生しました。1986年に制作が始まり、小塚昌彦を統括者として迎え、日本語のモダンゴシック体の開発が進められました。モリサワの目指したのは、欧文フォントの代表格であるHelveticaのように、直線的かつ現代的なデザインの和文書体を形作ることでした。そのため、かなや漢字の運筆についても、伝統的な書き方を取り入れながら骨格が作られています。

ファミリー制作には、写研でも利用されていたドイツ製の自動アウトライン生成システム「イカルス」が使用され、効率的な制作プロセスが実現しました。1990年には「新ゴシック体」として写植用書体が発売され、電算写植用の「新ゴシック」、DTP用の「新ゴ」という異なる名称でリリースされました。このフォントは、写研の「ゴナ」と似ているとして1993年に特許問題を引き起こすことにもなります。

また、新ゴには「学参新ゴ」「学参 常改新ゴ」といった漢字に関するファミリーも存在し、これらは文部科学省の学習指導要領に準拠しています。特に、常用漢字における「代表的な字形」を考慮したデザインが施されています。

UD新ゴ

2009年には、元の新ゴをベースに可読性を高めた「UD新ゴ」が登場しました。このフォントは、英字部分が同社の製作したClearTone SGと同じスタイルであり、さらに「UD新ゴNT」や「UD新ゴ コンデンス」といった様々なバリエーションが展開されています。これにより、モダンなデザインとともに、視認性が一層向上しました。

その後、2014年には「UD新ゴ ハングル」が登場し、2016年には「UD新ゴ 簡体字」、2019年1月には「UD新ゴ 繁体字 標準字体」もリリースされ、日本語・英語・中国語・韓国語が共存するデザインが可能となりました。特に、2019年には最新のIVSに対応した「UD新ゴ（AP版）」が発表され、ペアカーニングや新たなウェイト（ELとU）が追加されました。

ファミリー構成

新ゴファミリーの構成は非常に多様で、以下のような種類があります。

• - 新ゴ EL (Extralight) - 1991年
• - 新ゴ L (Light) - 1990年
• - 新ゴ R (Regular) - 1991年
• - 新ゴ M (Medium) - 1990年
• - 新ゴ DB (Demibold) - 1990年
• - 新ゴ B (Bold) - 1990年
• - 新ゴ H (Heavy) - 1990年
• - 新ゴ U (Ultrabold) - 1990年
• - 新ゴ シャドウ - 2008年
• - 新ゴ エンボス - 2008年
• - 新ゴ ライン - 2009年
• - 新ゴ 太ライン - 2008年
• - 新ゴシック アウトライン - 1994年

UD新ゴも多様なスタイルがあり、使用するシーンによって最適なフォントが選択可能です。

実際の使用例

新ゴは、鉄道事業者の駅名標やサインシステムに幅広く使用されています。一部の事業者は過去に使用していたゴナからの移行も行っています。特に駅名表示において清潔感と可読性が求められるため、新ゴの採用が進んでいるのです。また、2005年には軽量化された「KeiType」がモリサワからリリースされ、携帯電話やPDAに採用されることになりました。

最近では、Nintendo SwitchにおいてもUD新ゴがシステムフォントとして採用され、高精度で美しい表示が実現されています。このように、新ゴシリーズは、デジタルから印刷まで、さまざまなフォントの世界でその存在感を示しています。

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