ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ

「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ（(Ghost) Riders in the Sky: A Cowboy Legend）」は、1948年にアメリカで発表されたカントリー・ミュージックの楽曲です。作詞・作曲を手掛けたのはスタン・ジョーンズ。この曲は発表されるやいなや大きな反響を呼び、翌1949年にはカントリーの枠を超え、当時のクロスオーバー・ポップスチャートにランクインするなど、幅広い層に受け入れられました。その独特な世界観と旋律は、数十年を経た今日でも多くのアーティストにカバーされ続け、ポピュラー音楽史におけるスタンダードの一つとして認識されています。

この楽曲のタイトルは、発表以降いくつかのバリエーションが見られます。「ゴースト・ライダーズ」や「カウボーイ・レジェンド」といった名称で言及されることもありますが、著作権管理団体であるASCAPに登録されている公式なタイトルは「ライダーズ・イン・ザ・スカイ（Riders in the Sky）」とされています。本項では、一般的に広く用いられている「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ」を中心に取り上げます。

楽曲の主題となっているのは、アメリカ西部の古いカウボーイたちに伝わる伝説です。歌詞は、あるカウボーイが見た不気味な幻を語ります。雷鳴轟く暗い空に、眼を血走らせ、蹄を鋼鉄のように鳴らす痩せ衰えた牛の群れが、亡霊となったカウボーイたちに追われて疾走する光景です。この幻の中で、亡霊たちは生きているカウボーイに向かって厳かに警告します。もし彼が今の生き方を改めなければ、いずれ彼自身もまた、終わりのない空を永遠に悪魔に飼われた牛を追いかけ続ける運命に囚われることになるだろう、と。作者のスタン・ジョーンズ自身は、この物語は彼が12歳だった頃に、年上のカウボーイの友人から実際に聞かされた話に基づいていると述べています。このカウボーイ伝説は、ヨーロッパ、特に北欧に古くから伝わる「ワイルドハント（Wild Hunt）」と呼ばれる、超自然的な存在が空を駆け巡る伝承との類似性が指摘されることもあり、そのルーツの深さを示唆しています。

「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ」は、発表以来、実に多岐にわたるアーティストによってカバーされてきました。その数は50組を超えるとも言われ、カントリーのみならず、ポップス、ロック、ブルース、ジャズ、メタルなど、様々なジャンルで再解釈されています。特に有名なバージョンとしては、1949年にヒットしたヴォーン・モンローやビング・クロスビーによるもの、サザン・ロックの雄アウトローズによるエネルギッシュな演奏、そしてカントリー界のレジェンド、ジョニー・キャッシュによる魂のこもった歌唱などが挙げられます。エルビス・プレスリーなど、その他多くのアーティストもこの曲を歌い継いでいます。日本でも小坂一也とワゴン・マスターズがカバーしています。また、1949年の同名映画でジーン・オートリーが歌唱したほか、作者自身のスタン・ジョーンズも後に録音しています。

この楽曲は、音楽そのものだけでなく、広範な文化にも影響を与えています。ロックバンド、ドアーズの「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」への影響、マーベル・コミックの人気キャラクター「ゴーストライダー」の名前や設定、イングランドのサッカークラブ、アストン・ヴィラの応援歌としても知られています。音楽、フィクション、スポーツの分野にまでその存在感を示しています。

スタン・ジョーンズによって生み出された「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ」は、カウボーイの伝承を基にした物語歌として、ジャンルや国境を超えて文化的なアイコンとなり、世代を超えて愛され続ける不朽の名作です。その強烈なイメージとメロディは、今も多くの人々を魅了し続けています。

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