ゴータの戦い

ゴータの戦い：ザイトリッツの奇策

ゴータの戦いは、七年戦争中の1757年9月19日、現在のドイツ、テューリンゲン地方ゴータを巡り行われた戦闘です。フランスとオーストリアの連合軍が一時プロイセン軍を排除しゴータを占領。しかし、プロイセン軍の指揮官ザイトリッツが、少数精鋭の騎兵部隊を率い、大胆な計略によって連合軍を撤退させ、ゴータを奪還しました。

背景：プロイセン包囲網とザクセンの危機

1757年夏、コリンの戦いで敗北したプロイセン軍は守勢に回ります。オーストリア軍との睨み合いが続く中、プロイセンは四方から包囲されつつありました。西からは、連合軍がテューリンゲンに進軍し、ザクセンへの侵攻を窺います。プロイセン軍は、ザクセンへの脅威を取り除くため、連合軍を速やかに撃破する必要に迫られていました。

フリードリヒ大王は軍を二つに分け、オーストリア軍と対峙させつつ、自身は連合軍の迎撃に向かいます。大王軍はザクセンを強行軍で横断し、連合軍の進路を遮断。前衛部隊は、ザイトリッツが指揮を執りました。9月7日には、両軍の前衛部隊がペガウで衝突しています。

連合軍は、プロイセン主力軍の接近に動揺し、未集結の部隊を抱えながら西へ後退。プロイセン軍は追撃を続け、9月15日にゴータへ入城しますが、連合軍本隊は既にアイゼナハまで後退していました。

プロイセンを巡る状況は悪化の一途を辿ります。北西ではフランス軍がハルバーシュタット、マクデブルクを狙い、北ではスウェーデン軍がポンメルンへの攻撃を開始。東ではオーストリア軍がシュレージエンに進出し、南ではベルリンが奇襲を受けました。フリードリヒ大王は、これ以上の追撃は困難と判断し、ザイトリッツの前衛部隊をゴータに残し、東へ反転します。

プロイセン軍の追撃を逃れた連合軍は、アイゼナハで態勢を立て直し、プロイセン軍がエアフルトへ後退したとの情報を受け、ザクセンへの前進を再開。まずは、敵の前衛部隊のみが展開しているゴータの占領を目指し、攻撃部隊を派遣します。

戦闘：連合軍のゴータ占領とザイトリッツの反撃

9月18日夜、連合軍はゴータ攻略部隊を編成し、メヒターシュテットで前衛部隊と合流。総兵力は1万を超え、指揮官も参加してゴータへ向かいました。

9月19日早朝、連合軍はゴータ市を包囲しようと進軍。しかし、ザイトリッツは敵の接近を察知し、市外へ出撃します。ザイトリッツが指揮する部隊は騎兵のみで、兵力はわずかでした。午前9時頃、ゴータ北面で両軍の軽騎兵が衝突。プロイセン軍は徐々に後退し、正午頃には撤退しました。

連合軍はゴータへ入城し、市内に部隊を展開。プロイセン軍の撤退を疑わず、追撃は行いませんでした。連合軍の指揮官たちはゴータ公を訪問し、フリーデンシュタイン宮殿に集まり、物資の調達を開始します。

しかし、プロイセン軍は撤退したかに見せかけ、密かに部隊を再編。ザイトリッツは、一計を案じ、再びゴータへ進軍します。

午後2時頃、ゴータ東方にプロイセン軍が姿を現しました。ザイトリッツは、竜騎兵の一部を下馬させ、横に長く展開させます。ゴータからは、歩兵と騎兵からなる大軍が迫ってくるように見えました。さらに、ザイトリッツが送り込んだ兵が、プロイセン全軍がゴータへ向かっていると吹聴して回りました。

プロイセン軍の軽騎兵は、連合軍の軽歩騎兵に果敢に攻撃を仕掛けます。数的に劣るプロイセン軍でしたが、ザイトリッツの計略に惑わされた連合軍は浮足立ちます。

晩餐会の席についていた連合軍の指揮官たちも、プロイセン軍本隊の強襲と思い込み、宮殿を飛び出し、市内の部隊に戦闘隊形を組むよう命じます。その間にも、プロイセン軍の軽騎兵はゴータ市内に突入し、敵兵を斬り倒し、市内を駆け巡ります。連合軍の指揮官たちは辛うじて脱出に成功しました。

午後4時頃、混乱に陥った連合軍は抵抗を諦め、ゴータから撤退。ザイトリッツ率いるプロイセン軍はフリーデンシュタイン宮殿に入り、連合軍のために用意された晩餐に舌鼓を打ちました。

結果：ザイトリッツの称賛とナポレオンの酷評

プロイセン軍はゴータを再占領し、連合軍は多数の死傷者と捕虜を出しました。さらに、フランス軍の貴族将校に随伴する多くの非戦闘員と物資が鹵獲されました。

ゴータの戦いの後、テューリンゲンにおける戦況は膠着状態となります。フリードリヒ大王は、ザイトリッツを称賛し、その用兵術を高く評価しました。一方、ナポレオンは、連合軍の指揮官を酷評し、「ロスバッハへのプレリュード」と断じました。

ゴータの戦いは、ザイトリッツの機略が光る戦いとして、歴史に名を刻んでいます。将軍の器量と豪胆さが、兵力差を覆すことを証明した好例と言えるでしょう。

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