ゴールディ (ワシ)

ゴールディ：ロンドン動物園を騒がせたイヌワシの逃亡劇

1960年代、ロンドン動物園には、ゴールディという名のオスのイヌワシがいました。彼は、1965年3月、動物園から脱走するという、イギリス中を巻き込む大騒動を引き起こします。

2月28日、飼育係の清掃中にケージの扉が開いた隙を突き、ゴールディは自由の身となりました。イギリス海軍や民間防衛軍も参加した大規模な捜索作戦が展開されましたが、彼は12日間にわたって自由を謳歌し続けたのです。

彼の主な縄張りは、動物園に隣接するリージェント・パークでしたが、カムデンタウン、トテナムコートロード、ユーストンといった近隣の地域にも姿を現しました。

ゴールディの逃亡劇は瞬く間にイギリス全土へと広がり、大勢の人々が彼の動向に注目しました。動物園には、捕獲方法に関する助言の手紙や電話が殺到し、リージェント・パークには、ゴールディの姿を一目見ようと集まった人々で賑わいました。公園周辺では、空を舞うゴールディに目を奪われたドライバーたちによって、深刻な交通渋滞が発生する事態にまで発展したのです。

メディアもこの出来事を大きく報じました。BBCのテレビ番組では、レポーターのジョン・トンプソンが、エチオピアのバードパイプを演奏してゴールディを誘き寄せようと試みましたが、残念ながら失敗に終わりました。この出来事の話題は、なんと庶民院の討論にまで及んだほどでした。

逃亡生活を送る中で、ゴールディは、リージェント・パーク内にあった在英アメリカ大使館のアヒルを襲って食べていたと伝えられています。また、公園内では2匹のテリアが彼に襲われる事件も発生しましたが、周囲の人々の機転によってテリアたちは無事だったようです。

そして3月11日、ゴールディはついに捕獲されました。動物園の副飼育係長が、ウサギの肉を巧みに使用した罠によって、彼を無事に確保したのです。捕獲後もゴールディは健康状態に問題がなく、パートナーのレジャイナの待つ元のケージへと戻されました。彼の帰還後、ロンドン動物園には、それまでの倍近い数の来園者が訪れるようになったと伝えられています。

興味深いことに、ゴールディは同年12月にも再び脱走を試みています。この時は4日間で捕獲されましたが、彼の冒険心と自由への憧れを物語るエピソードといえるでしょう。

ゴールディの逃亡劇は、人々を巻き込み、メディアを賑わせ、そして動物園に活気をもたらした、忘れられない出来事として、今も語り継がれているのです。彼の物語は、野生動物の驚異的な能力と、人間社会との意外な接点を浮き彫りにしています。 彼の自由への強い意志と、それを取り巻く人々の反応、そして最終的な彼の無事を願う気持ちは、人々の心を強く捉えたようです。

この事件は、現代においても、動物と人間の共存、野生動物の保護、そしてメディアの役割など、様々な観点から考察できる興味深い事例となっています。

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