サイテックス

サイテックス：時代を先取りしたブロック玩具

サイテックスは、1986年（昭和61年）にトミー（現タカラトミー）から発売された、動力ユニットを内蔵したブロック玩具シリーズです。当時としては画期的なコンセプトを持ちながらも、短命に終わったその背景には、時代の潮流と玩具市場の複雑な事情が絡み合っていました。

概要

サイテックス最大の特徴は、電動機またはプルバックモーターを内蔵したユニットを中心に、ブロックを組み立てることで、完成したメカが自走可能になる点でした。当時のトミーの担当者によると、開発のきっかけはSF映画に登場する宇宙船であり、設定上では、未来の宇宙実験室が暴走し、小惑星群に寄生して巨大化、人類への侵略を企むというものでした。これに対し、サイテックス・システムは次々と戦闘メカを開発し、迎え撃つという壮大な物語が展開されていました。

ラインナップ

ラインナップは、電動ユニット内蔵の「ヘリボット」（最高額商品）を筆頭に、「サンドクルーザー」「グロスター」「スペースシップ」、そしてプルバックモーター搭載の廉価版「ガントラック」「ワークドーザー」「バックファイアー」の全7種類でした。電動タイプは、モーターユニットと乾電池を内蔵したパワーユニットが分離しており、延長コードを使用することで遠隔操作も可能でした。

各商品には作例が示されており、ヘリボットであればヘリコプターや2足歩行ロボットを組み立てることができました。ブロック玩具の特性上、他のメカを自由に組み上げることも可能でした。さらに、グロスターの本体にヘリボットの上半身を乗せるなど、複数の商品を組み合わせることで、ユーザーの創造性を刺激する遊び方ができました。

短命に終わった理由

しかし、サイテックスの売れ行きは芳しくなく、1年足らずで販売終了となりました。その要因として、革新的な遊び方が時代を先取りしすぎたこと、そして、自由な組み立てが可能である反面、作例以外の組み立て方では、意図不明な物体になってしまい、遊びの幅が狭かったことなどが挙げられています。

ゾイドシリーズとの関連性

トミーの人気玩具であるゾイドシリーズと比較すると、サイテックスは多くの共通点を持っていました。スケールは共に72分の1で、搭乗するパイロットのフィギュアも共通でした。組み立てには接着剤が不要である点も共通していました。また、後にゾイドシリーズで発売された「グレードアップユニット」には、サイテックスの動力機構の一部が継承されています。

ゾイドが動物型メカを基本とするのに対し、サイテックスは宇宙船、航空機、自動車、ロボットなどのSFメカをモチーフとしている点も大きな違いでした。サイテックスがブロック玩具として開発された背景には、ゾイドのコスト増加を抑制するため、パーツのモジュール化を図る狙いもありました。しかし実際には、パーツの精度などの問題から開発費が嵩み、最高額商品のヘリボットは、当時のゾイド最高額商品「ウルトラザウルス」を超える高額商品となってしまいました。

ゾイドブロックスへの影響

サイテックス自体は短命に終わりましたが、シリーズを買い集めて遊びを発展させ、ユーザーがブロックを自由に組み立てるというコンセプトは、ゾイドシリーズの一つ「ゾイドブロックス」へと受け継がれ、ヒットしました。サイテックスは、その革新的なアイデアによって、後の玩具業界に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

サイテックスは短命ではあったものの、ブロック玩具の新たな可能性を切り開いた、記憶に残るシリーズです。

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