サイパン (空母)

アメリカ海軍航空母艦「サイパン」(USS Saipan, CVL-48)から通信中継艦「アーリントン」(USS Arlington, AGMR-2)へ

「サイパン」は、アメリカ海軍のサイパン級航空母艦のネームシップとして建造されました。しかし、その役割は航空母艦に留まらず、後に通信中継艦「アーリントン」へと姿を変え、多様な任務に従事しました。

航空母艦「サイパン」としての活躍

1944年7月10日に起工した「サイパン」は、1946年7月14日にジョン・G・クロメリン艦長の指揮下で就役しました。就役後は、パイロットの訓練や各種試験に従事し、ジェット戦闘機の運用試験や電子機器の評価試験にも参加しました。また、ベネズエラの大統領就任式にはアメリカ代表団を輸送、海軍兵学校生の訓練航海も行うなど、多岐にわたる活動を行いました。

特筆すべきは、1948年5月にアメリカ海軍初の艦上ジェット戦闘機部隊、VF-17A飛行隊を搭載したことです。これにより、「サイパン」はアメリカ海軍の歴史に新たな一歩を刻みました。また、同年12月にはグリーンランドで遭難した飛行士をヘリコプターで救助するなど、その活動は多岐にわたりました。

1954年には、ハリケーン「ヘイゼル」の被災地であるハイチへの救援物資輸送や、メキシコでのハリケーン被害に対する救助活動も実施。その功績からハイチ政府より感謝状が贈られました。

その後、不活性化処理を経て1957年10月3日に一旦解役されました。

通信中継艦「アーリントン」への変貌

1959年5月15日に航空機運搬艦(AVT-6)に艦種変更された後、1964年9月1日には通信中継艦(AGMR-2)に再変更。「アーリントン」と改名し、1966年8月27日に再就役を果たしました。艦名の「アーリントン」は、海軍で初めて無線実験が行われた場所であるバージニア州アーリントンにちなんでいます。

再就役後は、調整航海や訓練を経て、ベトナム戦争に投入され、1967年8月21日から作戦活動中の第7艦隊の艦艇に確実な通信を提供するという重要な役割を担いました。また電子機器の修理支援も行うなど、その貢献は多岐にわたりました。

1968年からはアポロ計画にも参加し、アポロ8号、10号、11号の回収を支援。宇宙船の着水地点における通信中継艦として、その役割を全うしました。特にアポロ11号の回収では、ニクソン大統領が「アーリントン」を訪問するなど、その重要性が際立ちました。

「アーリントン」は、ベトナム戦争における功績により7個の従軍星章を受章しました。

その後

1970年1月14日に退役し、サンディエゴの予備役艦隊で保管された後、1975年8月15日に除籍。1976年6月1日にスクラップとして売却され、その生涯を終えました。

「サイパン」から「アーリントン」へ。その変遷は、アメリカ海軍の歴史における技術と戦略の変化を物語っています。航空母艦としての活躍、災害救援活動、そして宇宙開発への貢献まで、その生涯はまさにアメリカ海軍の歴史そのものでした。

関連項目

アメリカ海軍艦艇一覧
サイパン級航空母艦
ライト(CVL-49) - 同型艦

外部リンク

USS Saipan CVL48 Association homepage
* Navy photos of Saipan - ウェイバックマシン（2001年11月15日アーカイブ分）

もう一度検索