サイベ沢遺跡

サイベ沢遺跡

サイベ沢遺跡は、北海道函館市桔梗町に位置する縄文時代前期初頭から中期末葉にかけての大規模集落遺跡です。1971年3月5日、出土遺物が北海道指定有形文化財に指定されました。

概要

遺跡は函館市の中心部から約6.5km、西桔梗町と呼ばれる場所に東西600m、南北400mにわたって広がります。その広さは約15ヘクタールに及び、北海道内でも最大級の規模を誇ります。遺跡からは、円筒下層式土器や上層式土器などの生活道具が大量に含まれた、厚さ4mもの文化層が発見されており、北海道・東北地方における最大級の遺跡の一つとして、青森県の三内丸山遺跡にも匹敵すると考えられています。

発掘調査

1949年、北海道大学教授の児玉作左衛門、同大助手の大場利夫の指導のもと、市立函館博物館が調査主体となり、函館市内や札幌の中学生、高校生ら延べ1335人が参加する大規模な調査が45日間にわたって実施されました。この調査によって、地表から深さ5mに及ぶ土層から完全な形の土器が発見され、縄文時代前期から中期にかけての約2000年間の円筒土器文化の変遷を把握することが可能となりました。また、骨角製の漁撈具や狩猟生活を示す道具、人面装飾土器、護符を意味する人形なども出土し、これまで不明であった本州との文化交流の状況が明らかになりました。

出土遺物

調査された2箇所の貝塚では、遺物包含層は5mに達し、7つの文化層から円筒土器が層位的に出土しました。地表面から4.5mの深さまで遺物を含む層が確認され、全部で25層に分けられます。円筒土器を含む遺物包含層は7層あり、第1から第4文化層が円筒下層式、第5から第7文化層までが円筒上層式と順序よく出土し、北海道における円筒土器の下層式から上層式への変遷が明らかにされました。

円筒下層a〜d式土器、円筒上層a〜e式土器など、円筒土器文化全般にわたる土器が出土しており、各文化層から出土した土器にはサイベ沢Ⅰ式からサイベ沢Ⅶ式までの7つの土器型式が設定され、南北海道の標準となっています。出土した円筒土器や各種石器、骨角器などは、北海道南部と東北地方北部との関連性を示すものが多く、その一部は1970年に北海道有形文化財に指定されています。北側のB地点からは、円筒下層d式土器を中心とする五角形の掘り込みをもつ楕円形の竪穴建物跡3軒が検出されています。遺物の分析から、沢の南北に2つの建物跡群の存在が推定されています。土器の他に、石皿や石冠などの石器類、土偶、土製品が出土しています。貝塚からは、アサリ、ハマグリを主とする貝類の他、カガミガイ、ツメタガイなども含まれ、シカ、イルカ、マグロ、カジキなどの動物遺体、および仰臥屈葬の人骨が出土しています。

北海道指定有形文化財

指定年月日: 1971年3月5日
所在地: 函館市青柳町17の1 市立函館博物館
構造・形状等: 29点（土器20点、土偶2点、人面土器片1点、土版1点、石冠2点、骨器3点）

参考文献

『総覧縄文土器』小林達雄 編、アム・プロモーション、 2008年
『縄文時代研究辞典』戸沢充則 編、東京堂出版、1994年
『日本土器辞典』大川清・鈴木公雄・工楽善通 編、雄山閣出版、1996年

関連項目

縄文時代の遺跡一覧
北海道指定文化財一覧
北海道・東北地方の史跡一覧

外部リンク

北海道・北東北の縄文遺跡群

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