サイモン・ニューカム

サイモン・ニューカム：多才な天文学者、その生涯と業績

サイモン・ニューカム（1835年3月12日 - 1909年7月11日）は、カナダ生まれのアメリカ人天文学者、応用数学者です。独学で知識を習得し、アメリカ海軍天文台やジョンズ・ホプキンス大学で教鞭を執り、天文学、数学、経済学など幅広い分野で重要な貢献をしました。

生い立ちと教育

ニューカムは、カナダのノバスコシア州ウォレスで、教師の父と判事の娘である母の間に生まれました。正規の学校教育はほとんど受けていませんでしたが、父親から基礎教育を受け、薬草療法師のもとで短期間見習いを経験しました。しかし、その非科学的な手法に失望し、独学で数学や天文学を研究する道を選びました。アメリカに移住後、ハーバード大学で理学の学士号を取得しています。

天文学者としての業績

1861年、ニューカムはアメリカ海軍天文台の数学・天文学教授に就任。惑星の位置観測や惑星運動の理論研究に取り組みました。月の位置計算表の誤りを修正し、天文定数の再計算計画に着手するなど、天文学の発展に大きく貢献しました。1896年には、彼の計算結果が国際的な標準となることが決定されました。

光速度の測定

ニューカムは、天文学における重要な定数である光速度の正確な値を求めるため、独自の測定方法を開発しました。アルバート・マイケルソンとの共同研究や、単独での測定を通して、光速度の精度向上に大きく貢献しました。

ベンフォードの法則の発見

ニューカムは、対数表の最初の方のページが摩耗していることに気づき、数字の出現頻度に関する法則を発見しました。これは後に「ベンフォードの法則」として知られるようになり、統計学の分野で重要な原理となっています。

チャンドラー・ウォブルの研究

ニューカムは、地軸の振動現象であるチャンドラー・ウォブルについて、観測された運動と予測された振動周期の矛盾を解明しました。地球の弾性を考慮することで、この矛盾を説明し、地球物理学に貢献しました。

その他の分野での貢献

ニューカムは、経済学にも造詣が深く、著書『政治経済の原理』は、ジョン・メイナード・ケインズから高く評価されました。また、貨幣数量説における交換方程式を初めて提唱した人物としても知られています。

さらに、SF小説の執筆も手がけ、『His wisdom the defender』や『暗黒星』などの作品を発表しました。

晩年と評価

ニューカムは、膀胱癌のためワシントンD.C.で亡くなりました。その葬儀には、当時の大統領ウィリアム・タフトも参列し、アーリントン国立墓地に軍人として埋葬されました。

彼の業績は、天文学、数学、経済学など多岐にわたり、その学術的な貢献は、現代社会においても高く評価されています。小惑星や月のクレーターに彼の名前が冠されていることからも、その功績の大きさが伺えます。

人物像

ニューカムは、独学で様々な分野を学び、卓越した知識と才能を発揮した人物でした。その一方で、チャールズ・サンダース・パースのキャリアを妨害したとされる逸話も残っており、評価が分かれる側面もあります。

逸話

ニューカムは、「空飛ぶ機械」の実現は不可能だと考えていたことで知られています。しかし、ライト兄弟による飛行機の開発成功後、その見解を修正し、航空技術の発展を認めています。

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