サイモン・フレイザー (第11代ラヴァト卿)

サイモン・フレイザー、第11代ラヴァト卿（1667年頃 - 1747年4月9日）は、スコットランド貴族として、そして、策略家として歴史に名を刻んだ人物です。彼の生涯は、スコットランドの政治的混乱と複雑な家系争いに深く関わっており、最終的にはジャコバイト蜂起への関与により、悲劇的な最期を遂げました。

ラヴァト卿は、7代ラヴァト卿ヒュー・フレイザーの四男トマスの次男として誕生しました。裕福な家系に生まれた彼は、アバディーンシャーのキングス大学で教育を受けました。しかし、彼の生涯は、学問よりも、政治的陰謀と相続争いに彩られることになります。

9代ラヴァト卿の死後、相続問題をめぐって複雑な法廷闘争が勃発しました。9代卿には女子しかいなかったため、サイモンの父トマス、そしてサイモン自身は、ラヴァト卿位を相続しようと主張しました。激しい争いの末、裁判所は当初、9代卿の未亡人の娘を継承者と判断しましたが、この判決は後に覆ることになります。この間、サイモンは、継承者をめぐる策略や、無理やり結婚を強要するなどの問題行動も起こしています。

興味深いことに、サイモンは、名誉革命後のウィリアム3世に仕えながらも、亡命したジェームズ2世とも密かに接触していました。彼は両陣営に接近し、自らの利益を追求する策略家として振る舞っていました。1702年には、スコットランドの大貴族たちを巻き込みジャコバイトの反乱を計画しましたが、政府に二重スパイと疑われ失敗。フランスへ亡命する羽目になります。パリでも疑いをかけられ投獄され、約10年間を獄中で過ごしました。

1713年に脱獄しスコットランドへ帰国した彼は、1715年のジャコバイト蜂起では、なんと反ジャコバイト側に立ちました。ジョージ1世への忠誠を誓い、自身の氏族を蜂起させ、恩赦を得ます。この行動は、彼の保身と野心、そして政治状況の複雑さを物語っています。

帰国後、彼はラヴァト卿位と財産の回復に奔走しました。長年にわたる法廷闘争の後、1730年、ついに裁判所は彼を第11代ラヴァト卿として認めました。しかし、彼の野望はここで終わらなかったのです。

彼は再びジャコバイトと接触し、ジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアートからジャコバイト貴族の爵位を授与されました。1745年のジャコバイト蜂起では、自身の氏族を反乱に加わらせました。高齢と健康状態の悪化を理由に、自ら反乱軍に加わることを避けましたが、息子のサイモンを参加させています。

しかし、彼の策略は功を奏せず、モラー湖で逮捕され、ロンドンへ送られました。大逆罪で裁かれ、1747年、斬首刑に処せられました。処刑の直前、彼はホラティウスの言葉を引用し、「祖国のために死すは美しく名誉なり」と述べたと言われています。

ラヴァト卿の爵位は剥奪されましたが、100年以上後、議会法によって爵位が回復されています。彼の生涯は、野心、策略、そして時代の混乱が絡み合った、ドラマチックで複雑な物語として、歴史に刻まれているのです。彼は、スコットランドの歴史において、重要な役割を果たした人物でありながら、その行動の是非については今もなお議論が続けられています。彼の残した遺産は、現代においても、人々の関心を惹きつけ続けています。

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