サイモン・ミットン

サイモン・ミットン

イギリスを拠点に精力的な活動を続けるサイモン・ミットン氏（1946年12月18日生まれ）は、天文学者であると同時に、多くの人々に科学の魅力を伝える科学伝記作家としても広く知られています。現在は、学術の中心地であるケンブリッジ大学のセント・エドムンズ・カレッジを主な活動拠点としています。

ミットン氏の著書は多岐にわたり、天文学の様々な側面を扱っています。中でも特に評価が高いのは、同じくケンブリッジ大学のフェローであり、20世紀を代表する天文学者の一人であるフレッド・ホイル氏の生涯と業績を詳細に綴った伝記です。この著作は、複雑な科学的内容を分かりやすく解説しつつ、対象となる人物の人間的な側面にも光を当てており、科学伝記の分野で重要な位置を占めています。

日本でも彼の著作のいくつかは翻訳され、読者の天文学への理解を深める一助となっています。1980年には、『現代天文百科』、『銀河を探る』といった一般向けの解説書が出版されています。また、パルサーや超新星残骸として知られるカニ星雲に焦点を当てた『超新星の謎 -カニ星雲と現代天文学』も、ブルーバックスの一冊として邦訳されており、多くの天文ファンに親しまれました。さらに、近年の著作としては、暗黒物質の存在を提唱した著名な宇宙物理学者エレミア・オストライカー氏との共著である“Heart of Darkness: Unraveling the Mysteries of the Invisible Universe”（2013年、プリンストン大学出版局）があり、現代宇宙論の最前線における不可視宇宙の謎に迫る内容となっています。

学術的な交流も深く、ケンブリッジ大学では、優れた天文学史家として知られ、ハーシェル一族の伝記研究で著名なマイケル・ホスキン氏や、同じく天文学史家のオーウェン・ギンギリッヒ氏らと親交を結んでいます。特にホスキン氏が長年にわたりハーシェル家の人々と親密な関係を築き、その宇宙論や生涯の研究に取り組んでいる影響もあり、ミットン氏自身もウィリアム・ハーシェルやキャロライン・ハーシェルといった歴史上の重要な天文学者たちの業績や思想、そして彼らの伝記的な側面に深い造詣を持っています。

ミットン氏は私生活においても天文学とのつながりを持っています。彼の妻であるジャクリーン・ミットン氏もまた著名な天文学者であり、科学書の著者としても活動しています。夫妻の天文学分野への長年の貢献は高く評価されており、その栄誉を称え、小惑星(4027)には「ミットン」という名が冠せられました。

これまでの功績に対して、ミットン氏はいくつかの栄誉を受けています。1973年には、現在も拠点としているケンブリッジ大学セント・エドムンズ・カレッジの特別研究員に選出されました。また、2009年3月には、アメリカ合衆国アーカンソー大学で開催された第35代バリンジャー講演者として招かれ、その学術的な知見を披露しました。天文学の研究者、そして分かりやすい科学伝記の書き手として、サイモン・ミットン氏は科学の発展と普及に貢献し続けています。

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