サイレン〜ETERNAL SIREN〜

漫画作品『サイレン〜ETERNAL SIREN〜』は、ゲーム『SIREN2』の世界観を基に、漫画家・万乗大智氏によって描かれ、『ヤングサンデー』に連載されました。一般的なホラー漫画の枠に収まらず、よりダークファンタジーとしての色彩を強く持っているのが特徴です。作者自身、漫画というメディアでは音や動画による恐怖表現に限界があると感じたことや、ホラーそのものが得意分野ではないことを理由に、このような作風を選んだと語っています。

物語の始まり

物語は1990年（昭和65年）に遡ります。日本の離れ島である夜魅島で、その住民たちが一夜にして忽然と姿を消すという不可解な事件が発生しました。島内で唯一発見されたのは、生後間もない赤子一人だけ。その傍らには、「サイレンの夜は光を消してはならぬ」という不可解な走り書きが残されていました。

16年の時が流れ、事件の唯一の生存者であった赤子は、天本由貴という名の少女に成長していました。由貴は毎夜のように悪夢にうなされていました。夢の中ではサイレンが鳴り響き、異形の怪物に襲われながらも、どこからともなく聞こえる不思議な少年の「やさしい声」に励まされるのです。この悪夢と声の謎を解き明かし、自らを苦しみから解放するため、由貴は民俗学教授である土田圭氏と共に、再び夜魅島へ足を踏み入れることを決意します。夜魅島へ向かう船には、土田教授を追ってきたというテレビ番組のスタッフ、三上里美と林太郎の姿もありました。そして、一行を乗せた船はついに夜魅島に到着します。

島に上陸して間もなく、由貴たちは不可解な怪異に遭遇します。不気味な雰囲気に包まれながらも、土田教授と由貴は島の調査を開始します。しかし、日が沈み、暗闇が島全体を覆う頃、事態は急変します。既に死んだはずの者たちが蠢き始め、由貴の悪夢の中で響いていたあのサイレンが、現実の夜魅島に鳴り響き渡るのです。

登場人物

本作に登場するキャラクターたちは、ゲーム版『SIREN』および映画版『サイレン〜FORBIDDEN SIREN〜』の登場人物と共通する姓や名を持つ者が多くいますが、その設定や人物像、行動原理はゲーム版第一作に近く、映画版とは大きく異なります。

天本由貴: 16年前の夜魅島事件の唯一の生存者である主人公の少女。悪夢と「やさしい声」の謎を追い、島を再訪します。施設育ちながら応急治療の知識があり、幻視の能力を持つ家系の生まれ変わりとして、重要な運命を背負っています。
土田圭: 由貴と島へ同行する民俗学教授。学会では異端視されながらも、島の古代儀式と謎の解明に情熱を燃やし、危険を顧みず行動します。
三上里美 & 林太郎: 島へ取材に訪れたテレビスタッフ。特に三上は元グラビアアイドルとしてのプライドが高く自己中心的な行動を取りますが、過酷な状況下で悲劇的な結末を迎えます。
島の関係者: 都築伸三郎、東健一、木暮隆義、山中圭介といった、開発業者や駐在巡査など島の住人・滞在者たちも、島の怪異に巻き込まれ、それぞれが悲惨な運命を辿ります。
南田豊: 島で独自の研究を続ける謎多き医師。「赤い水」の性質に詳しく、主人公たちとは異なる目的で暗躍します。
夜叉丸: 由貴を導く謎の少年。その正体は400年前の人物であり、夜魅島の悲劇的な歴史、そして主人公の運命に深く関わっています。
* 謎の赤い服の女: 夜叉丸の母親であり、島の異変の元凶に関わる巫女。狂気にとらわれ、由貴を執拗に狙います。

他メディア作品との違い

本作は、ゲーム版『SIREN』シリーズとはいくつかの点で異なる独自の要素を持っています。最も顕著なのは、「視界ジャック」の能力が存在しない点です。代わりに、異界を視たりテレパシーのような力を用いる「幻視の能力」が描かれています。

また、本作における異形の存在「屍人」の描写にも違いが見られます。ここでは人間を捕食する描写があり、一部ではゾンビのような側面が強調されています。出現する屍人は基本的に人型ですが、骨格が変形したり、天井を移動したりするなど、必ずしも人間と同じ動きをするわけではありません。犬屍人や蜘蛛屍人のような特殊な種類は登場しません。

さらに、本作の屍人は光を恐れるという性質があります。太陽光や人工の明かり、炎などから距離を置き、夜が明けると暗い場所へ逃げ込みますが、光を浴びてもダメージを受けるわけではなく、単に怯むだけです。その再生能力は異常なまでに高く、たとえ急所を破壊されても瞬時に回復し、再び襲い掛かってきます。銃器などを扱う程度の知性はありますが、ゲーム版の屍人や闇人のように独自の文化や生活を持つわけではなく、明確な意思もないため、ひたすら人間を排除しようと襲撃してきます。

これらの独自要素が加わることで、『サイレン〜ETERNAL SIREN〜』はゲームシリーズの恐怖感とはまた異なる、異世界ファンタジーとしての側面を強く打ち出した作品となっています。

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