サイード・モラエイ

サイード・モラエイ：国境を越えた柔道家

サイード・モラエイ（Saeid Mollaei）は、1992年1月5日生まれの柔道家です。イランで生まれ、後にモンゴルを経て、現在はアゼルバイジャンの代表として国際大会で活躍しています。階級は81kg級、身長176cm。

生い立ちと柔道への転向

7歳でレスリングを始め、19歳で柔道に転向しました。2011年にはアジアジュニア73kg級で3位に入賞しましたが、世界ジュニアでは7位に終わりました。その後、階級を81kg級に上げ、着実に実力をつけていきました。

リオ五輪と世界選手権優勝

2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、初戦で後の優勝者であるロシアのハサン・ハルムルザエフに敗れました。しかし、2018年の世界選手権（バクー）では、決勝で日本の藤原崇太郎を破り、イラン勢として15年ぶりの優勝を果たしました。

グランドスラム・アブダビでの出来事

2018年のグランドスラム・アブダビでは、準決勝でベルギーのマティアス・カスとの対戦中に棄権しました。この際、イスラエルのサギ・ムキとの対戦を避けるための虚偽申告ではないかとの疑惑が浮上しましたが、IJF（国際柔道連盟）はこれを認めませんでした。

政治的な圧力と難民認定

2019年の東京世界選手権では、イスラエルの選手との対戦を避けるようイラン政府から圧力を受けたとされています。モラエイ自身も、家族への影響を恐れて棄権を余儀なくされたと訴えました。その後、IJFの支援を受けドイツに滞在し、難民認定を受けました。

モンゴル代表、そしてアゼルバイジャン代表へ

2019年12月にはモンゴルに国籍を変更し、2021年の東京オリンピックにはモンゴル代表として出場。決勝で永瀬貴規に敗れたものの、銀メダルを獲得しました。

2022年からは、本人の希望によりアゼルバイジャン代表として国際大会に出場。同年7月のグランドスラム・ブダペストでは、かつて政治的な理由で対戦できなかったサギ・ムキとの初対戦を果たし、勝利しました。

スポーツと政治、友情

モラエイは、政治的な困難を乗り越え、スポーツマンシップと友情を示してきました。イスラエルのテルアビブで開催された大会に出場した際には、「スポーツと政治は別だ」と語り、多くの人々に感動を与えました。

主な戦績

2011年 - アジアジュニア 3位（73kg級）
2018年 - 世界選手権 優勝（81kg級）
2021年 - 東京オリンピック 2位（81kg級）
2022年 - グランドスラム・バクー 優勝（81kg級）

現在

IJF世界ランキングは8位（2024年1月29日現在）。アゼルバイジャン代表として、更なる活躍が期待されています。

サイード・モラエイの物語は、スポーツが持つ力、友情、そして困難に立ち向かう勇気を教えてくれます。

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