サッカーチベット代表

サッカーチベット代表：故郷を想う亡命者たちのチーム

サッカーチベット代表は、国際サッカー連盟（FIFA）に加盟していない、特別なチームです。彼らは、チベット亡命政府の元、主にインドのダラムサラに暮らすチベット難民によって構成されています。FIFAに加盟するサッカー協会は国家単位であることが原則のため、チベット代表はFIFA主催の大会に参加することはできません。

歴史：逆境を乗り越えて

チベットにおけるサッカーの起源は、20世紀初頭に遡ります。ギャンツェでの貿易取引所で、イギリス人とインド人の兵士がサッカーを楽しんだのが始まりでした。その後、イギリス式の軍事教練や警察制度が導入されるにつれて、チベット人たちもサッカーに親しむようになりました。

しかし、1950年代のチベット動乱により、多くのチベット人が祖国を追われ、インドなどの周辺諸国へ逃れました。難民生活を送る中で、彼らはチベット人学校を設立し、民族文化の継承に努めました。近年では、国際社会へのアピールを目指し、サッカーをはじめとした近代スポーツも積極的に取り入れられています。

ダラムサラでは、亡命政府樹立直後からいくつかのクラブチームが存在し、定期的にサッカー大会が開催されていました。1998年には、イタリアのロックグループの招待で、イタリア・ボローニャで初の国際試合を行いました。

代表チーム結成：希望を胸に

2001年、チベットサッカー協会が設立され、チベット独自のナショナルチーム結成への機運が高まりました。インド・デラドゥンで行われた代表選手選考試合を経て、20名の選手によるチベット代表チームが誕生しました。

代表チームは、国外遠征を行う際にパスポートの代わりに難民証明書を使用します。しかし、インド政府の再入国許可を得る必要があり、全員が許可されるとは限りません。そのため、ヨーロッパなど他地域在住のチベット人難民が代表チームに加わることもあります。

2001年6月30日には、デンマークのコペンハーゲンでグリーンランド代表との親善試合に招待されました。この試合に対し、中国政府は経済的報復を示唆して中止を要求しましたが、デンマーク政府や主催者側は拒否。試合は世間の注目を集め、チベット代表は国際試合における初ゴールを記録しました。

FIFIワイルドカップ：パロディの中の真剣勝負

2006年には、ドイツのサッカークラブであるFCザンクトパウリが主催する「FIFIワイルドカップ」に招待され、ザンクトパウリ、ジブラルタル代表と対戦しました。結果はグループリーグ敗退でしたが、チベット代表にとって貴重な経験となりました。

ユニフォーム：誇りを身にまとう

チベット代表のユニフォームは、かつてヒュンメルが提供していましたが、現在はオランダのメーカーである「コパ」に変更されています。ユニフォームには、チベットの文化やアイデンティティを象徴するデザインが施されています。

サッカーチベット代表は、FIFAに加盟していないため、国際的な舞台で活躍する機会は限られています。しかし、彼らの活動は、故郷を想う亡命者たちの希望の光であり、チベットの文化とアイデンティティを世界に発信する重要な役割を担っています。

関連項目：チベットとディアスポラのサッカーの歴史

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