サッポロ冬物語

サッポロ冬物語：冬の定番ビールの30年超の歴史

サッポロビール株式会社が製造・販売する「サッポロ冬物語」は、1988年10月に発売された冬季限定の生ビールです。発売から30年以上を経た現在も、秋から冬にかけて多くの人々に楽しまれています。その歴史と背景、そして商品開発における興味深いエピソードを紐解いていきましょう。

ビール業界の変遷と「サッポロ冬物語」誕生

1970年代後半から1980年代前半にかけて、日本のビール業界は「面白容器競争」の時代でした。ユニークなデザインの缶や、注ぎ口から音が鳴る小型樽など、容器自体に工夫を凝らした商品が多く登場しました。しかし、1982年頃から首都圏で流行したチューハイブームは、ビール市場の伸びを鈍化させました。

この状況を受け、各ビールメーカーは商品の中身、つまりビールそのものの品質向上に力を入れるようになりました。サッポロビールも例外ではなく、1987年4月に麦芽100％の「サッポロエーデルピルス」、翌年には「サッポロ生ビール モルト100」を発売。高品質志向への転換を図りました。

夏季のビール需要は頭打ちだった一方、秋から初冬にかけての需要は伸びていました。この状況を踏まえ、サッポロビールの当時の専務取締役である平野勝氏は、冬季限定ビールの発売を提案します。商品名は、当時の副社長である荒川和夫氏がシェークスピアの戯曲『冬物語』にちなんで「サッポロ冬物語」と命名。こうして、1988年10月、「サッポロ冬物語」は発売されました。平野氏は発売を見届けることなく1988年8月に他界されましたが、「サッポロ冬物語」は、彼の遺志を受け継ぎ、長年にわたって愛される商品となりました。

時代の変化と商品改良

発売当初は缶と瓶の両方で販売されていましたが、近年は缶のみの販売となっています。また、アルコール度数も当初の5.5％から、2015年からは6％に引き上げられています。2001年と2002年には小麦麦芽を配合、2005年には協同契約栽培の麦芽とホップを100％使用した年もありました。2012年には、1988年当時の味と喉越しを再現するため、原料に米、コーン、スターチを加えるなど、時代とともに改良が加えられてきました。

ラベルデザインも年々変化し、白や青を基調としたデザインが多く用いられています。2005年には、シンガーソングライターのさだまさしがラベルデザインを担当したこともありました。2016年の販売数は、大瓶（633ml）20本換算で13万ケースに上りました。

印象的なCMと楽曲

「サッポロ冬物語」は、記憶に残るCMでも知られています。1991年には、モデルの夏川結衣が出演し、槇原敬之の『冬がはじまるよ』がCMソングとして使用されました。この曲は、その後もEvery Little Thingによるカバー、そして2011年には槇原敬之による新録版がCMで使用されるなど、長年にわたって愛され続けています。その他にも、高野寛・田島貴男、伊豆田洋之、Dual Dream、カズン、FLYING KIDS、MOON CHILD、ZARD、chara+yukiなど、多くのアーティストがCMソングを担当。深津絵里や田辺誠一といった俳優が出演したCMもありました。これらのCMは、冬の訪れと共に「サッポロ冬物語」の存在を人々の記憶に強く刻みつけてきました。

結論

「サッポロ冬物語」は、ビール業界の変遷、消費者の嗜好の変化、そして時代を彩る音楽や映像と深く関わってきた、まさに時代を反映したロングセラー商品です。これからも、冬の季節に人々の心に温かい余韻を残すビールであり続けることでしょう。

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