サテリコン (映画)

フェデリコ・フェリーニ監督による官能と混沌の古代ローマ絵巻『サテリコン』

1969年、イタリアとフランスの合作によって生まれた映画『サテリコン』（イタリア語題: Fellini Satyricon）は、フェデリコ・フェリーニ監督による、古代ローマを舞台にした官能的で奔放な作品です。基となったのは、紀元1世紀頃に書かれたペトロニウスの小説『サテュリコン』。フェリーニ監督は、この古典文学を独自の解釈で映画化し、時代を超越した魅力を持つ傑作を生み出しました。

ネロ帝時代のローマ、愛と喪失、そして奇妙な旅

映画は、ローマ帝国皇帝ネロの治世下にある古代ローマを舞台に物語が展開します。主人公は、美青年の学生エンコルピオ。彼は愛する少年奴隷ジトーネを親友アシルトに奪われ、深い悲しみに沈みます。必死にジトーネを取り戻すも、ジトーネはアシルトのもとへ去ることを選択します。

絶望の淵に立たされたエンコルピオは、地震によって住んでいた宿を失い、放浪の旅に出ます。そこで出会うのは、詩人のエウモルポと、成金の解放奴隷トリマルチョーネ。トリマルチョーネの豪勢な饗宴に招かれるも、予期せぬ出来事が発生し、エンコルピオとエウモルポは命からがらその場を逃げ出すはめになります。

砂漠で眠りについたエンコルピオは、海賊団に捕まり、奴隷船に送られます。そして、運命のいたずら、その船の中でエンコルピオは、アシルトとジトーネと再会を果たすのです。

フェリーニ監督の独特な映像表現と、時代を超越した魅力

フェリーニ監督は、古代ローマを舞台にしながらも、現実離れした幻想的な映像と、奔放な物語展開によって、独特の世界観を作り上げています。当時のローマ社会の風俗や、人間の欲望、愛、喪失といった普遍的なテーマを、官能的な描写やシュールな場面を交えながら描き出しています。

映画音楽を担当したのは、ニーノ・ロータ。彼の音楽は、映画の幻想的な雰囲気をさらに高めています。撮影はジュゼッペ・ロトゥンノが担当し、その美しい映像は、映画の大きな魅力の一つとなっています。

数々の受賞歴と高い評価

『サテリコン』は、公開当時から高い評価を受け、第43回アカデミー賞では監督賞にノミネートされ、第27回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞にノミネートされました。また、第30回ヴェネツィア国際映画祭では最優秀イタリア映画賞を受賞するなど、数々の賞に輝いています。

日本では1970年9月19日に公開され、多くの観客を魅了しました。映画製作の裏側を描いたドキュメンタリー映画『フェリーニ・サテリコン日誌』も製作され、映画作りの過程を知る上でも貴重な作品となっています。

時代を超えて語り継がれる、フェリーニの創造性

『サテリコン』は、単なる古代ローマの物語にとどまりません。フェリーニ監督の独創的な映像表現と、人間の本質を突く物語は、現代においても多くの観客に強い印象を与え、様々な解釈を呼び起こします。その官能的で奔放な世界観は、時代を超えて、人々の心に深く刻まれ続けることでしょう。 映画史に残る傑作として、これからも多くの人々に鑑賞され、語り継がれていくこと間違いありません。

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