サトゥールン AL-55

AL-55 ターボファンエンジン

AL-55は、ロシアのNPOサトゥールン社が開発・製造するターボファンエンジンであり、先進的な練習機、無人航空機（UAV）、軽攻撃機への搭載を想定しています。製造は、サトゥールンとウファ・エンジン製造合同が50:50の割合で出資し分担しており、サトゥールンがエンジンコアの製造、地上・飛行試験、最終組み立てを担当し、ウファがそれ以外の部分を担当します。また、インドでは2016年からヒンドスタン航空機（HAL）でライセンス生産が開始される予定でした。2021年時点での情報では、エンジンは試験スタンドで5,000時間以上の稼働実績があり、4,500サイクル以上の周期的テストにも合格しています。

開発の経緯

AL-55の開発は1998年に始まりました。サトゥールン社はトレードショーなどで積極的に宣伝を行っていましたが、顧客の不在と資金調達の問題から開発はなかなか進展しませんでした。

しかし、2004年にインドがHAL HJT-36練習機のエンジンとしてAL-55を選定したことで状況は一変し、2005年から最初のベンチテストが開始されました。HJT-36用のAL-55Iの開発契約は6月に締結され、8月にはロシアの輸出機構であるロソボロネクスポルトとインドのヒンドスタン航空機（HAL）が、最大1,000基のAL-55Iエンジンのライセンス生産に合意しました。この合意には、250基のエンジンをインド国内のHAL施設で製造し、HJT-36練習機とHJT-39軽攻撃機の動力として使用するという確定注文が含まれています。

2008年8月19日には、MiG-AT"83"がエンジンをAL-55Iに換装して初飛行を行い、試験飛行を開始しました。同年11月14日には、エンジンがMiG-AT上で正常にテストされ、受け入れテストの準備が進められていることが報告されました。2009年には、インドのHAL向けに3基のプロトタイプの受け入れ試験が完了しています。

2010年4月27日には、50kg以上の重量を削減したアップグレード型AL-55Iのベンチテストが開始されました。これは、主要コンポーネントとエンジンシステムの寿命を延長するために実施されました。8月には主要な開発作業が完了し、翌年にはHJT-36の認定テストプログラムを正常に完了し、追加で10基の供給契約が結ばれました。

設計の特徴

AL-55の設計には、AL-31Fエンジンの開発経験が生かされています。AL-31Fの単なるスケールダウン型と見なされることもありますが、これは誤りです。AL-55はAL-31Fエンジンと比較して1/4に満たない重量でありながら、同規模のラルザックエンジンと比較して25%ほど上回る推力を発揮し、より高い高度で効果的に動作することができます。ラルザック 04R20とは完全な互換性があり、換装も可能です。

また、3つのオイルタンクと自律した滑油系統、NPO モルニヤ製のESU-55 FADECにより、AL-55はラルザックと比較して広いエンベロープ条件を有しており、搭載機はほぼ時間無制限での背面飛行が可能です。モジュラー構造を採用しているため、現地では複雑な整備を避け、分割して交換することで容易に整備でき、過酷な環境下においても良好な性能を維持できます。

派生型

AL-55: 標準型。推力2,200kg。
AL-55I: インドでのライセンス生産用に設計された派生機種。ベースのAL-55は2,500kgの最大推力を持つが、インドの技術的課題により1,760kgに制限されています。将来的にはHJT-39向けに2,200kgの推力を持つタイプを供給する予定です。
AL-55I-UVT: 推力偏向ノズルを追加したもの。計画中。
AL-55M: 改良型。計画中。
AL-55F: アフターバーナーを追加し、推力を3,500kgに増強したもの。ドライ推力は2,200kg。計画中。
AL-61: 推力を4,600kgに増強したモデル。計画中。
AL-155: アフターバーナー追加型。ドライ推力3,200kg、アフターバーナー点火時5,000kg。計画中。
AL-57: 高バイパス型。推力2,600kg。計画中。

搭載機

HJT-36 シターラ: AL-55Iを搭載。
MiG-AT: 83にAL-55Iを搭載するも機体の開発自体が中止。
SR-10: 試作機はAI-25を搭載していたが、量産機のエンジンとして搭載される予定。

提案されていた搭載機

HJT-39: 提案されていたが、計画は事実上棚上げ状態。
Yak-130
L-15: 提案のみ。AI-222-25を採用。
Su-25: エンジンの近代化案として提案。R-95ShやR-195から換装した場合、航続距離は1.5倍に拡大し、燃料消費量を40%削減できるとされていました。
無人航空機: スホーイのBLS-62などに提案。

仕様諸元（AL-55I）

形式: 2重系統 ターボファン
全長: 1,950 mm
直径: 462 mm（インレット）
乾燥重量: 315 kg
圧縮機: 2軸式低圧 (LP) と高圧 (HP) とアニュラ型燃焼器
低圧圧縮機: 3段
高圧圧縮機: 5段
タービン: 低圧:単段、高圧:単段
推力: 1,760kgf (離陸推力)
全圧縮比: 17.5
バイパス比: 0.515
空気流量: 28.5 kg/秒
タービン入口温度: 1445 ℃
燃料消費率: 0.69 kg/kgf.h (限界点での燃料消費率), 0.645 kg/kgf.h (巡航時の燃料消費率)
推力重量比:
運用寿命: 1,200 時間
オーバーホールまでの時間: 300時間

関連項目

イーウチェンコ AI-222
ソユーズ RD-1700
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