サファーとマルワ

サファーとマルワ

サファー（アラビア語: الصّفا、Aṣ-Ṣafā）とマルワ（アラビア語: المروة、Al-Marwah）は、サウジアラビアのメッカに位置するふたつの小高い丘です。この地で行われるハッジおよびウムラーの儀式において、ムスリムはこれらの丘の間を7回往復します。これには、神が預言者イブラーヒーム（アブラハム）とその妻ハジャール、その子であるイスマーイールに与えた試練が関係しているのです。

故事の背景

伝説によれば、神はイブラーヒームにハジャールとイスマーイールをこの荒れ地に放置するよう命じました。持たされた食料が尽きると、ハジャールは息子のために水を探すべく、サファーとマルワの丘の間を往復しました。彼女が最初に登ったのはサファーです。周囲を見渡しましたが、水源は見つかりませんでした。次にマルワに移動し、再度周囲を見渡します。この間、彼女はイスマーイールの姿を確認できますが、丘と丘の間にいるときは不安に駆られ、できるだけ早く移動しました。ハジャールは痛恨の思いで何も見つけられずに丘を7往復し、再び息子の元へ戻ります。

その際、彼女は神の声を聞き、天使ジブリール（ガブリエル）が水のある場所を知らせるために遣わされたことを知ります。ハジャールはその指示に従い、水を見つけることができ、イスマーイールに必要な乳を与えることができました。その湧き水こそがザムザムの泉として知られています。後に、この奇跡を目撃したベドウィンの一団がここに留まり、ハジャールと息子イスマーイールと共に定住したことが、現在のメッカの発展に繋がったのです。

サファーとマルワの位置

サファーとマルワは、マスジド・ハラーム内にあり、カアバからそれぞれ約100メートル及び350メートルの距離にいます。これらの丘の間の距離はおよそ450メートルであり、7往復すると総距離は約3.2キロメートルとなります。この過程で、巡礼者はハジャールがイスマーイールのために水を求めた苦難を追体験するのです。

サアイの儀式

この丘の間を行き来する行為は「サアイ」と呼ばれ、アラビア語で「探す」を意味します。この儀式は、ハジャールの努力と神の慈悲を記念するものであり、現代では屋根付きの回廊が設置され、通行する人々に配慮された構造になっています。内側の通路には高齢者や身体障害者のための専用通路も設けられています。

サファーとマルワは、ただの丘ではなく、信仰の象徴としての重要な役割を果たしており、その背後には深い宗教的、歴史的意義が込められています。これらの丘での儀式を通じて、ムスリムは自身の信仰と神の慈悲に思いを馳せるのです。

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