サミュエル・ハーマン・レシェフスキー

サミュエル・ハーマン・レシェフスキー（Samuel Herman Reshevsky）は、1911年11月26日に現在のポーランド領オゾルクフで生まれ、1992年4月4日にニューヨークで生涯を閉じた、ユダヤ系の傑出したアメリカ人チェスプレーヤーです。幼い頃からその才能を開花させ、「チェスの神童」として世界的に知られるようになりました。

レシェフスキーは8歳の時に家族と共にアメリカ合衆国へ移住しました。その驚異的な早熟さで、またたく間に注目を集め、国内最高峰の選手の一人となります。彼は通算7回にわたり米国チャンピオンのタイトルを獲得し、その実力を長く維持しました。彼のキャリアにおける最大の目標は世界チャンピオンとなることでしたが、第二次世界大戦の勃発により、その挑戦は一時的に阻まれます。

戦後、当時の世界チャンピオンであったアレクサンドル・アレヒンの死去によりチャンピオンの座が空席となると、1948年に新たな世界チャンピオンを決定するための特別なマッチトーナメントが開催されました。レシェフスキーはこの重要な大会に、ミハイル・ボトヴィニク、マックス・エーワ、ワシリー・スミスロフ、パウリ・ケレスといった当時の世界トッププレイヤーたちと共に参加しました。しかし、ソビエト連邦を代表するボトヴィニク、スミスロフ、ケレスといった強豪たちの前に屈し、惜しくも世界チャンピオンの栄冠を掴むことはできませんでした。この大会で優勝したボトヴィニクが新たな世界チャンピオンとなりました。

プロのチェスプレーヤーとしてのキャリアと並行して、レシェフスキーは保険の外交員や投資分析家としても活動していました。チェスに対する情熱は生涯衰えることなく、80歳で亡くなるまでチェスを指し続けました。

その才能は多くの同時代人によって高く評価されています。アメリカのグランドマスター、アーサー・ビズガイアは、同じく神童と呼ばれたボビー・フィッシャーと比較し、「フィッシャーはレシェフスキーのような意味での神童ではなかった。レシェフスキーは6歳の時から必勝のチェスを指していたのだ」と述べています。また、映画監督のチャールズ・チャップリンは、レシェフスキーがわずか7歳で20人の大人を相手に同時対局を行うエキシビションマッチを観戦し、その超人的な能力に感嘆しつつも、「もしや、この少年は異能の代償を健康で支払っているのではないか」と彼の将来を案じたという逸話が残っています。

レシェフスキーはボビー・フィッシャーとも幾度か対戦しています。特に1957年の合衆国チャンピオンシップでは、フィッシャーにわずか1点差で敗れました。さらに、アメリカ・チェス連盟主催の16番勝負では、フィッシャーが一方的に競技を中止したため勝負はつきませんでしたが、その対局の中でも、レシェフスキーが勝利した第1局と第7局での指し手は、彼のキャリアを通じて最高の部類に入ると評価されています。

レシェフスキーは自身のチェスの知識や経験を後世に伝えるため、いくつかの著作も残しています。代表的なものとしては以下の書籍があります：

Learn Chess Fast!
The Art of Positional Play in Chess
Great Chess Upsets
First Piatigorsky Cup International Grandmaster Chess Tournament
Reshevsky on Chess: The U.S. Champion Tells How He Wins
How Chess Games Are Won
Reshevsky's Best Games of Chess
Reshevsky on the Fischer-Spassky Games

サミュエル・レシェフスキーは、その類まれなる才能と長いキャリア、そして世界最高峰での戦いの歴史を通じて、アメリカチェス史における最も重要な人物の一人として記憶されています。

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