サムシン・エルス (ジャック・ブルースのアルバム)

ジャック・ブルースの通算10作目となるソロ・スタジオアルバム『サムシン・エルス』（Somethin Els）は、1993年にリリースされました。

解説

本作には、彼のキャリアにおいて重要な位置を占める楽曲が複数収録されています。

アルバム冒頭を飾る「ウェイティング・オン・ア・ワード」をはじめ、「ウィルパワー」や「シップス・イン・ザ・ナイト」といった楽曲には、長年にわたりブルースと活動を共にしてきたギタリスト、エリック・クラプトンがゲストとして参加しています。「ウィルパワー」と「シップス・イン・ザ・ナイト」は、このアルバムに先立つ1989年に発表されたベストアルバム『Willpower』に新曲として収録されていたものが、改めてレコーディングされたものです。

また、収録曲の中には、社会や政治的な出来事にインスパイアされた楽曲も見られます。「ピーシズ・オブ・ジ・イースト」は、イラン・イラク戦争を主題に据えており、「クリミナリティ」は、当時のイギリス保守党政権下で内務大臣を務めていたダグラス・ハードの発言に触発された作品です。

一方、収録曲の中で異彩を放つ「FM」は、ジャック・ブルース自身によるソロ・ピアノ演奏であり、彼の多才な音楽性の一端を示しています。

音楽評論家のStephen Thomas Erlewineは、AllMusicでのレビューにおいて、このアルバムに5点満点中4.5点を与え、「ソロ・キャリアにおける最良のアルバムの一つ」と高く評価しています。

参加ミュージシャン

ジャック・ブルース自身は、ボーカルに加えて、ベース、ピアノ、キーボード、チェロ、ドラムス、パーカッションと多岐にわたる楽器を担当し、アルバムのサウンドの基盤を築いています。

ゲストミュージシャンとしては、前述のエリック・クラプトン（リードギター）の他、ペーター・ヴァイヘ（ギター、アコースティック・ギター）、クレム・クレムソン（ギター）、レイ・ゴメス（ギター）といったギタリストが参加しています。

リズムセクションには、スチュアート・エリオット、アントン・フィアーといったドラマーに加え、トリロク・グルトゥやマーク・ナウシーフがパーカッションやドラムで参加し、楽曲に彩りを加えています。

また、ディック・ヘクストール＝スミスとデイヴ・リーブマンがサクソフォーンを、マギー・ライリーがボーカルやバッキングボーカルで参加しています。

収録曲

オリジナル盤には全9曲が収録されています。収録曲の大半は、ジャック・ブルースと作詞家ピート・ブラウンの長年にわたる共作です。「ウェイティング・オン・ア・ワード」、「ウィルパワー」、「シップス・イン・ザ・ナイト」、「ピーシズ・オブ・ジ・イースト」、「G.B.ドーン・ブルース」、「クリミナリティ」が両者の手による作品です。

「クローズ・イナフ・フォー・ラヴ」とインストゥルメンタル曲である「FM」はジャック・ブルースが単独で手がけました。「チャイルドソング」には、ブルースとブラウンに加えHymasも共作者として名を連ねています。

再発盤

2014年には、イギリスのレコードレーベルEsoteric Recordingsから再発CDがリリースされました。この再発盤には、ボーナストラックとして3曲が追加収録されています。これらのボーナストラックは、ジャック・ブルースがマーク・ナウシーフ、ミロスラフ・タディッチと共に制作したアルバム『スネイク・ミュージック』からの楽曲で、ジミ・ヘンドリックスの楽曲「The Wind Cries Mary」のカバーなどが含まれています。

『サムシン・エルス』は、ジャック・ブルースの多角的な音楽性と、彼を取り巻く優れたミュージシャンたちの共演が結実した、その後のソロキャリアを代表するアルバムの一つとして位置づけられています。

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