サラリーマン (オレたちひょうきん族)

サラリーマン：『オレたちひょうきん族』が生んだ異色のキャラクター

サラリーマンは、1980年代にフジテレビで放送されていたバラエティ番組『オレたちひょうきん族』の中で、明石家さんまが演じたコントキャラクターです。番組内の人気コーナー「タケちゃんマン」シリーズに登場する敵役として、その異質な存在感で強烈なインパクトを残しました。

概要

サラリーマンの初登場時、さんまは電球の付いたマントを身にまとい、「一千光年の宇宙から派遣された悪の使者…」と名乗ります。しかし、その実態は商事会社に勤務するごく普通のサラリーマンで、高卒で手取り187,700円、毎日2時間残業という設定。メガネとスーツ姿がトレードマークで、不敵な笑みを浮かべながら名刺を差し出すというギャップが特徴です。名刺交換を好んで行うという行動も、当時のサラリーマン社会を風刺しているようにも感じられます。

変身パターンは、同じく番組内のキャラクターであるナンデスカマン同様、コント中に突如としてビートたけしの愛人ネタに移行するという、シュールな展開が繰り広げられます。たけしに正体を見破られると、さんまが高笑いと共に変身するという、お決まりの流れがありました。

サラリーマンは、番組内で金持ちキャラのタケちゃんマン7を強く恨んでおり、特にボーナスを自慢するタケちゃんマンに対し、酔った勢いで絡むのが得意技でした。これは当時の社会情勢や、サラリーマンの不満を代弁しているようにも見えます。

登場から3週目には、スクーター（黄色のホンダ・フラッシュ）に乗った「サラリーマンライダー」にパワーアップしました。これは、番組スタッフがマンネリ化を避けるために、テコ入れとして導入したものでしょう。ビートたけしは、「出世する事と家を買う事を諦めたサラリーマン程、やっかいな者はいない。怖い物知らずだから、無茶できる」と発言しており、このキャラクターのモチーフになったと考えられます。さんま自身も、ビッグ3でのトークで、「フジテレビの社員で出世を諦めたサラリーマンほど怖い存在はない」と語っています。

子供には不評、大人には大ウケ

サラリーマンは、番組スタッフや出演者からの内輪受けは非常に良かったものの、メイン視聴者層であった子供からの評判は悪く、登場からわずか1ヶ月で番組から姿を消しました。しかし、番組スタッフは、このサラリーマンが登場するコントを、番組の中で特に印象に残った場面の一つとして挙げています。その中でも、タケちゃんマン7がサラリーマンに「何だお前、普通の人じゃないか」と絡んだのに対し、サラリーマンが「普通の人が一番怖いんだ」と返したシーンは、さんまの鋭さを感じさせると評価されています。たけしも、2012年の27時間テレビで、さんまがこのキャラクターについて語った際に大笑いし、「あの時代にあれは凄かった。何のメイクもなく、頭にネクタイかなんか巻いて『サラリーマンだ!』ってのは」と絶賛しています。

さんま自身は、このキャラクター作りに気合いを入れており、演じていて非常にノリが良かったと語っています。しかし、当時の『ひょうきん族』は、当初の20～35歳の男性層だけでなく、幼年層にも視聴者層が広がっていたため、子供には地味なサラリーマンは受け入れられず、短命に終わってしまいました。最終回のスペシャル番組にも出演は叶いませんでした。

関係者の評価とその後

サラリーマンは、ビートたけしが、さんまが演じたキャラクターの中で一番好きだったと語るなど、番組関係者からの評価は非常に高いキャラクターでした。ひょうきん族マニアの甲斐よしひろもこのキャラクターをイチオシしており、島田紳助も、『ひょうきん族』の最終回の一回前の番組内で、このキャラクターを「これはポイントが高い」と評価しました。DVDでは最終巻の特典映像に収録されるなど、通好みのキャラクターとして知られています。

さんまにとっても印象的なキャラクターだったようで、『さんまのSUPERからくりTV』で、罰ゲームとして「サラリーマンかくし芸コンテスト」にこのキャラクターで出ようとしましたが、ロケ地が真冬の新宿だったため、寒さに耐えられず断念しました。『たけし・さんまの有名人の集まる店』でもサラリーマンを演じ、なぞかけにみせた大ボケで鬼瓦権造をズッコケさせました。2008年の27時間テレビでは、短縮鉄道の夜コーナーで満を持して登場しました。しかし、共演した『はねるのトびら』の西野亮廣からは「もっと派手なキャラクターにしてください！」と突っ込まれてしまう場面もありました。この時、さんまは1984年当時より月収が上がったことにも言及しています。

サラリーマンは、短命に終わったキャラクターではありますが、その斬新な設定とシュールな笑いは、今でも多くの人々に語り継がれています。番組の出演者やスタッフにとっては、特に思い入れの強いキャラクターであり、番組史に残る名キャラクターと言えるでしょう。

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