鬼瓦権造

鬼瓦権造：ビートたけしが生み出した不朽のキャラクター

鬼瓦権造は、数々の名キャラクターを生み出してきたビートたけしさんが演じた、最も有名なキャラクターの一人です。フジテレビのバラエティ番組『オレたちひょうきん族』をはじめ、様々な番組でその独特な姿とギャグで視聴者を魅了しました。一見すると奇抜なキャラクターですが、その背景にはたけしさんの深い人間観察とユーモアのセンスが息づいています。

誕生秘話：浅草の下積み時代から生まれたキャラクター

鬼瓦権造のモデルは、たけしさんが浅草で下積みをしていた頃に実際に遭遇した人物だと言われています。アルプス工業の文字が刺繍されたドカジャンにニッカポッカ、独特の髪型と口調…モデルとなった人物の特徴をほぼそのまま取り入れたとされています。『ビートたけしのオールナイトニッポン』などでも、浅草にいた面白い人物として語られていたそうです。その面白さから、コントキャラクターとして取り入れられたとのことです。

なお、全国に「アルプス工業」や「アルプス興行」といった名称の会社が存在しますが、鬼瓦権造の設定とは一切関係ありません。

鬼瓦権造という名前は、放送作家の高田文夫さんが名付け親です。当初は『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』という番組で誕生し、その面白さから『オレたちひょうきん族』にもレギュラー出演を果たしました。

電話帳に掲載された「鬼瓦権造」

驚くべきことに、実際に「鬼瓦権造」という名前で電話帳に掲載されている人物がいたそうです。1989年には、たけし軍団のダンカンさんが『ビートたけしのオールナイトニッポン』でその人物に生電話をしています。たけしさんは、自分のキャラクターが原因で迷惑をかけてしまったことに対して、謝罪の言葉を述べていました。

キャラクター像：元サラリーマンの土木作業員

鬼瓦権造の職業は元サラリーマンの土木作業員です。特徴的な角刈りに丸い髭、そして「アルプス工業」と書かれたジャンパーがトレードマーク。時には「吉田小十郎」と名乗ることもありました。「冗談じゃないよ！」と、手を前にかざし首をカクカク振る仕草が定番ギャグです。

『オレたちひょうきん族』のコーナー「タケちゃんマン7」では、タケちゃんマン7に変身した際も、このメイクのまま「タケちゃんマン手鼻7」として登場していました。『ひょうきん族』以外にも、『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』『FNSスーパースペシャルテレビ夢列島』『たけし・さんまの有名人の集まる店』、そして1996年以降の『タモリ・たけし・さんまBIG3 世紀のゴルフマッチ』など、様々な番組に出演し、その存在感を示しました。

『有名人の集まる店』では、焼き鳥屋を営んでおり、明石家さんまさん扮する貴子ママとは男女の関係という設定でした。『北野ファンクラブ』の「亀有ブラザーズ」でも、鬼瓦権造を思わせるメイクと衣装が用いられています。

鬼瓦権造の過去：意外な素顔

『タケちゃんマン「涙のじょうだんじゃないよ」』という回では、鬼瓦権造の過去が語られています。なんと小学校2年生で髭が生え、「棟梁」というニックネームをつけられていたそうです。大学生時代の結婚、そして子供誕生後の家庭崩壊…様々な出来事が、現在の鬼瓦権造を作り上げているようです。ただし、たけしさんの幼馴染という設定で描かれた回もあり、コント特有の設定である可能性もあります。

『有名人の集まる店』では、山田邦子さん演じる昔の女と、権造そっくりの息子が登場しています。2019年の『FNS27時間テレビ』では、村上信五さんが鬼瓦権造の息子「鬼瓦大納言」を演じました。

ビートたけし以外の鬼瓦権造：様々なパロディとオマージュ

たけしさんのフライデー襲撃事件による謹慎期間中、『オレたちひょうきん族』ではラッシャー板前さんが鬼瓦権造を演じました。また、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』では、たけしさんの復帰を願う「鬼瓦権造浅草ツアー」が企画されました。

坂本龍一さんは、『たけし・さんまの有名人の集まる店』で「坂本権造」として登場。ナインティナインの岡村隆史さんも、『めちゃ×2イケてるッ!』や『FNS27時間テレビ』で鬼瓦権造に扮しています。市川亀治郎さんも『ウチくる!?』で鬼瓦権造の扮装で出演していました。

元サッカー日本代表の中山雅史さんのニックネーム「ゴン」は、鬼瓦権造に由来していると言われています。また、伏見工業高校ラグビー部の監督だった山口良治さんのあだ名は「鬼瓦権“三”」でした。イギリスのバンド、ジャミロクワイの「ヴァーチャル・インサニティ」のミュージックビデオにも、「冗談じゃないよ」の振り付けが取り入れられていると話題になりました。

意外なエピソード：ハリウッド進出の可能性も？

映画監督のジョン・ランディスさんが、たけしさんを主演にシリアスな映画と、鬼瓦権造主演のコメディー映画を制作したいと持ちかけたエピソードがあります。しかし、たけしさんと鬼瓦権造が同一人物であることを知ったランディスさんは、そのギャップに驚きを隠せなかったそうです。

トータス松本さんのライブに、たけしさんが鬼瓦権造としてゲスト出演したこともあります。また、『有名人の集まる店』では、山本陽子さんと共演した際、酔っぱらって山本さんの杯に間接キッスをしてしまうハプニングもありました。

鬼瓦権造は、単なるコントキャラクターを超えて、日本のエンターテインメント史に刻まれた不朽のキャラクターと言えるでしょう。その独特の風貌とギャグは、時代を超えて人々を笑わせ、そして考えさせてくれます。

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