サリュート2号

サリュート2号 (Salyut 2)

サリュート2号は、1973年4月4日にソビエト連邦によってプロトンロケットで打ち上げられた宇宙ステーションです。このステーションは、ソビエトが同時期に進めていた一連の有人宇宙ステーション計画である「サリュート計画」の一部としてその名が発表されました。しかし、その実態は、公にされていたサリュート計画の他のステーション（例: サリュート1号）とは異なり、より秘密裏に進められていた軍事宇宙計画「アルマース」（ダイヤモンドの意）のために開発されたステーションのプロトタイプ機であったと考えられています。

アルマース計画との関連

アルマース計画は、主に地球の軍事偵察や宇宙空間での軍事的優位性の確立を目指した計画でした。サリュート2号に「サリュート」という名称が与えられたのは、その軍事的な性格や本来の目的を隠蔽するための偽装措置であったと広く認識されています。このため、サリュート2号はしばしば、アルマース計画の初号機、あるいはサリュート計画とアルマース計画の間の橋渡し的な存在として位置づけられます。

短命に終わったミッション

サリュート2号の打上げ自体は成功し、予定された軌道への投入も確認されました。しかし、打上げからわずか2日後の1973年4月6日頃、まだ無人の状態であったステーションに深刻な技術的問題が発生しました。突然、ステーション内部の気圧が失われ、これに伴って姿勢を正確に制御する機能も喪失してしまったのです。このトラブルの原因としては、ステーションを軌道に乗せたプロトンロケットの最終段を分離する際に発生した金属片が、ステーションの船体に衝突して穴を開けてしまった可能性が高いと推測されています。

さらに、打上げから11日後の1973年4月15日頃には、ステーションに電力を供給する重要な役割を担っていた2枚の太陽電池パネルが、原因不明の故障を起こしてしまいました。これにより、サリュート2号への電力供給は完全に途絶え、ステーションの機能は完全に停止しました。これらの連続した致命的な故障により、サリュート2号に宇宙飛行士が搭乗する計画は中止され、実際に訪れた宇宙船や乗組員は記録されていません。計画されていたソユーズ補給船による補給も実現しませんでした。

主要な技術仕様

サリュート2号は、アルマース計画の設計思想を反映した構造を持っており、以下のような主要な仕様を備えていました。

全長: 14.55メートル
最大直径: 4.15メートル
居住容積: 90立方メートル
打上げ時質量: 18,900キログラム
打上げロケット: プロトンロケット
太陽電池パネル数: 2枚
メインエンジン数: 2基
メインエンジンスラスト: 各400 kgf (約3.9 kN)

その最期と歴史的意義

機能停止に陥ったサリュート2号は、軌道を維持することができなくなり、徐々に高度を下げていきました。そして、1973年5月28日、打上げからわずか54日後に地球の大気圏に再突入し、その燃え尽きました。その短い生涯は、ソビエトの宇宙ステーション開発における技術的な困難と、冷戦時代の秘密主義的な宇宙開発の一面を象徴しています。

サリュート2号の失敗は、アルマース計画およびソビエトの宇宙ステーション開発全体にとって大きな教訓となりました。この経験は、その後に打ち上げられたアルマース計画のステーション（サリュート3号、サリュート5号として公表）や、サリュート計画の成功に貢献したと考えられています。同時期には、アメリカ合衆国もスカイラブ宇宙ステーションを運用するなど、両国は激しい宇宙開発競争を繰り広げていました。サリュート2号は、国際宇宙ステーションのような国際協力が主流となる前の時代における、国家主導の宇宙開発の歴史の一ページを飾る存在と言えるでしょう。

関連項目

宇宙ステーション
アルマース (宇宙ステーション)
スカイラブ
国際宇宙ステーション

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