サリ・ベリシャ

サリ・ベリシャ：アルバニアの政治を牽引した人物

サリ・ベリシャ（Sali Ram Berisha、1944年10月15日 - ）は、アルバニアの政治家であり、同国の大統領（第2代）と首相（第11代）を歴任した、アルバニア現代史において重要な人物です。

生い立ちと医学生としてのキャリア

1944年、アルバニア最北端のトロポヤ県で生まれたベリシャは、ティラナ大学医学部を卒業後、パリへ留学し血行動態を学びました。帰国後はティラナ大学で教鞭をとりながら、心臓外科医として診療所を開業。1980年代には数々の研究書を発表するなど、医学界でもその名を知られていました。

政治家への転身と民主化への貢献

1990年代初頭、アルバニアは社会主義体制の崩壊という大きな転換期を迎えます。ベリシャは、1990年12月に発生した学生の民主化運動を支持したことをきっかけに政治活動を本格化させ、体制批判を明確に打ち出しました。1991年にはアルバニア民主党の党首に選出され、民主化運動の先頭に立ちました。

1992年、社会主義政権崩壊後初の総選挙で民主党が圧勝し、ベリシャは大統領に選出されました。大統領として、長期にわたる鎖国政策で疲弊した経済の再建に取り組み、市場経済化と外資導入を促進。政治体制や経済構造の民主化を進めました。

改革の挫折と混乱、そして辞任

しかし、急激な市場経済化は行政の腐敗、失業率の上昇、闇経済の拡大といった負の側面も生み出しました。国民の不満が高まり、政権への求心力が低下すると、野党アルバニア社会党を中心に改革路線への反発が強まりました。また、ベリシャが政権内で自身の出身地である北部出身者を優遇したことも、南部を基盤とする政治勢力の反感を買う要因となりました。

1997年1月には、政府が黙認していたねずみ講が破綻し、南部ヴロラで暴動が発生。反政府暴動は全国に波及し、ベリシャは大統領職を辞任せざるを得なくなりました。

首相として政権復帰、そして現在

2005年、アルバニア民主党は総選挙で勝利し、ベリシャは首相に任命され政権に復帰しました。2008年には現職のアルバニア首相として初めて日本を訪問するなど、国際的な活動も積極的に行いました。

しかし、2011年には反政府デモが発生し、共和国防護隊との衝突で死者が出る事態となりました。ベリシャはクーデターの企てがあったと主張しましたが、国民の支持は得られず、その後の政権運営は困難を極めました。

サリ・ベリシャは、アルバニアの民主化と経済改革を推進した一方で、その過程で多くの課題も残しました。彼の政治的な遺産は、今後のアルバニアの発展に大きな影響を与えるでしょう。

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