サルト・サーキット

サルト・サーキット（Circuit de la Sarthe）

サルト・サーキットは、フランスのサルト県ル・マン市郊外に位置するサーキットであり、公道区間と常設コースから構成されています。その正式名称は「ル・マン24時間サーキット（Circuit des 24 Heures du Mans）」で、毎年6月には世界三大レースの一つである「ル・マン24時間レース」、隔年7月にはヒストリックな自動車が集まる「ル・マン・クラシック」が開催されることで知られています。

コースの構造と特性

サルト・サーキットは、一般公道を閉鎖し、常設コースと組み合わせた唯一無二の構造をしています。コースの2/3は通常の地方道であり、レース中は迂回ルートや専用区間が設けられています。このサーキットは、全長13.626kmと非常に長大であり、ニュルブルクリンク北コースに次ぐ伝統的なロングコースと言えます。

当初はシンプルなレイアウトでしたが、安全性を考慮してコーナーの追加や道幅の拡張が行われてきました。それにより、高速化するレースカーに対応した現代的な設計が求められ、プロトタイプカー（LMP1クラス）が平均速度240km/hに達するなど、スピード感は増しています。レースカーにはロングテールコンセプトなど、エアロダイナミクスを重視した特殊な設計が採用されることもあります。

特異な公道区間

サーキットで特に知られているのが、ル・マン名物の「ユノディエール」という長大なストレートです。普段は地方道338号線として運用され、全長約6kmの直線が存在していましたが、安全面を考慮して1990年以降、2つのシケインが設けられました。現在のレイアウトでは、このストレートの制約が明確に現れ、コーナーには難易度が求められる箇所が存在しています。

監視と安全対策

サーキット内には合計50箇所のマーシャルポストが配置され、約1,700名のマーシャルが交代で務めています。特に大規模なレース中には、セーフティカーが対応するために3箇所に待機しており、事故発生時には迅速な減速走行を促します。また、「スローゾーン」制度が導入されており、事故が発生した際には特定のセクションでの速度が制限されることで安全を確保します。

イベントと観客体験

ル・マン24時間レースの開催中には、20万人以上の観客が訪れるため、グッズショップや飲食店、移動遊園地、映画館、コンサートなど、多岐にわたるアトラクションが設営されます。これにより、観客はレースだけでなく、多様なエンターテインメントを楽しむことができます。

歴史的背景

サルト・サーキットは、1906年に始まり、その後耐久レース用に発展してきました。1923年から始まったル・マン24時間レースは、当時の公道コースから進化し、さまざまな安全対策が行われてきました。特に1955年の大惨事により、コースデザインが大幅に見直される契機となりました。マシンの進化に対応して、コース構造も随時改善され、現在に至ります。

アクセスと周辺施設

ル・マン市中心部からサーキットへは約15分の距離にあり、トラムなどの公共交通機関も便利です。サーキット近くにはル・マン-アルナージ空港があり、さらには自動車博物館も併設されており、過去の優勝車などの展示があります。劇的な歴史を持つサルト・サーキットは、今後も多くの自動車レースファンに愛され続けるでしょう。

もう一度検索