シケイン

シケイン（Chicane）

シケインは、モータースポーツや市街地において、車両が通行する際の速度を下げるために設置される構造物です。古い文献では「シケーン」とも表記されることがあります。フランス語の「chicane」に由来し、「屁理屈」や「合法的な詭弁」といった意味を持つ言葉から派生しています。ここでは主にモータースポーツにおけるシケインの役割や設置方法について詳述します。

目的

シケインの設置目的は主に以下の二つです。
1. ブレーキング競争の促進：長い直線セクションの後に設けられ、急な減速を強いることで、ドライバー同士のブレーキング競争を引き起こし、追い抜きの機会を増加させます。
2. 危険速度域の抑制：直線の中間に減速区間を設けることで、車両が危険な速度に達することを抑える役割を果たします。

たとえば、スパ・フランコルシャンのケメル・ストレートにあるレ・コームや、ヤス・マリーナ・サーキットの8・9コーナーなどが1の例として挙げられ、サルト・サーキットのユノディエールやモンツァ・サーキットの各シケインが2の具体例として知られます。

形状

大半のシケインは、S字やクランク状に設計されており、ドライバーが十分に減速しなければならない小さな半径のコーナーから構成されています。これによりサーキット内での最低速度地点となることが多いですが、一部には大きな減速を必要としない「高速シケイン」も存在します。

罰則規定

競技者はコース内を正しく走行する義務がありますが、シケインにおいてはその形状や目的のためにショートカットが行われることがあります。これを行った場合、重大な反則と見なされ、失格などの厳しいペナルティが課される可能性もあります。しかし、1990年以降は、ミスによるショートカットで利益を得なかった場合は、競技者が処罰されないという風潮が広まっています。シケインはしばしば舗装されていないため、ショートカットにより車両にダメージが及ぶリスクも存在しています。

設置方法

シケインには、常設、仮設、選択式の三種類があります。

- 常設シケイン：サーキットの設計に織り込まれ、移動不可のタイプです。通常、進入前には退避エリアが設けられます。
- 仮設シケイン：特定のイベントの際に一時的に設置されるタイプで、パイロンや縁石で区切られています。
- 選択式シケイン：ドライバーがシケインを使うかどうか選べる設計です。鈴鹿サーキットのシケインがかつてこのタイプでした。

シケインの主な設置位置は、長い直線セクションの中間、または直線の終わりに設けられます。近年ではその本来の目的に合致しない場所に設置される例もあり、直線の進入速度を制御する役割を担っています。

著名なシケイン

日本国内

- カシオトライアングルシケイン：鈴鹿サーキットにあり、1982年に設置されました。進入時の高速性から、安全性を考慮しての設置です。
- ダンロップシケイン：富士スピードウェイにあり、1984年に設置を決定したシケイン。以前のコースと比べて形状が変更され、セクションでのオーバーテイクポイントとされています。

日本国外

- バスストップシケイン：ベルギーのスパ・フランコルシャンに位置し、2003年までバス停のような形状でした。競技の特性上、オーバーテイクが多く見られる場所です。
- コークスクリュー：アメリカのラグナ・セカにあるシケインで、急な高低差の中で曲がる難易度の高いコーナーです。

モータースポーツ以外でのシケイン

道路交通においても、交通事故防止のためにシケインが設置されることがあります。また、シクロクロスの競技では障害物として活用されます。成田国際空港では、特別な経路に対して「シケイン」と呼ばれることもあります。

シケインは、競技の安全性を高め、迫力と戦術的側面を強化するために欠かせない要素となっています。

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